(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン

 
第2章 褥瘡の予防と発生後のケア


褥瘡の予防と発生後のケア Clinical Questions
褥瘡の予防
6.リハビリテーション


CQ1 リハビリテーション介入は、早期から行ってもよいか

推奨
推奨度 B 関節拘縮ならびに筋萎縮を含む廃用症候群を予防するために、十分なリスク管理のもと、早期からリハビリテーション介入を行うことが勧められる。


【エビデンスレベル】
訓練開始時期の違いによる廃用症候群予防に関して非ランダム化比較試験1があり、エビデンスレベルIIIとなるが、褥瘡予防を目的とした研究ではない。ただし、廃用症候群について「脳卒中治療ガイドライン2004」では、廃用症候群を予防するための急性期からの介入について「強く勧められる:グレードA」としている。

【解説】
  • 脳卒中発症後2週間以内の早期歩行自立群では廃用性筋萎縮が予防されたとする非ランダム化比較試験1があり、歩行可否による筋萎縮の程度について評価を行っている。褥瘡発生リスクの高い患者は、脳卒中による全身不良の患者に準じる。
  • 「脳卒中治療ガイドライン2004」2では、「廃用症候群を予防し、早期の日常生活動作(ADL)向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもと急性期からの積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)」とされており、「全身状態不良で、座位が開始できない患者にも、関節可動域訓練、良肢位保持、体位変換を行うことが勧められる(グレードB)」とされている。
  • 褥瘡の危険要因の中には、多くの廃用症候群があることから、種々のリスクを考慮した上で、早期からの介入により、発生リスクを減じることが求められる。

【参考文献】
1. 近藤克則,太田 正.脳卒中早期リハビリテーション患者の下肢筋断面積の経時的変化 廃用性筋萎縮と回復経過.リハビリテーション医学.1997;34(2):129-33.
2. 脳卒中合同ガイドライン委員会 編.脳卒中治療ガイドライン 2004.協和企画,東京.2004;178-80.



CQ2 関節拘縮を予防するために他動運動を行ってもよいか

推奨
推奨度 C1 自動運動が困難な場合には、徒手的・愛護的な他動運動を行ってもよい。


【エビデンスレベル】
関節の不動が余儀なくされる対象者に対して、他動的な伸張を加えて関節可動域の変化を比較したランダム化比較試験1234があり、エビデンスレベルIIであるが、いずれも関節拘縮を防止するところまでは至っておらず、また、褥瘡に対する効果について検証したものではない。

【解説】
  • 関節可動域の変化を検討した研究として、足関節のギプス固定後の患者に対して、他動的伸張(短時間・長時間)を含む治療プログラムと含まない治療プログラムをランダム化比較し、それぞれの群間に差がないという報告1がある。また、両側の膝関節屈曲拘縮を有する高齢者を対象に、長時間・低負荷の伸張を加えることができる機器を用いた場合と徒手的他動伸張を比較し、両者に差がないとの報告2、あるいは、脊髄損傷者を対象として1日30分のストレッチを4週間実施し、実施しなかった場合とのランダム化比較試験の結果、差がなかったとの報告3がある。さらに、膝の屈曲拘縮を有する高齢者を対象に、ベッド上のポジショニングによる治療効果をランダム化比較試験によるCross Over試験によって検討し、非介入群との差がなかったとの報告4がある。また、複数のランダム化比較試験があるものの介入によって関節拘縮を予防するまでの効果がみられていない。

【参考文献】
1. Moseley AM, Herbert RD, Nightingale EJ, Taylor DA, Evans TM, Robertson GJ, Gupta SK, Penn J. Passive stretching does not enhance outcomes in patients with plantarflexion contracture after cast immobilization for ankle fracture: a randomized controlled trial. Arch Phys Med Rehabil. 2005;86(6):1118-26.
2. Steffen TM, Mollinger LA. Low-load, prolonged stretch in the treatment of knee flexion contractures in nursing home residents. Phys Ther. 1995;75(10):886-95; discussion 895-7.
3. Harvey LA, Batty J, Crosbie J, Poulter S, Herbert RD. A randomized trial assessing the effects of 4 weeks of daily stretching on ankle mobility in patients with spinal cord injuries. Arch Phys Med Rehabil. 2000;81(10):1340-7.
4. Fox P, Richardson J, McInnes B, Tait D, Bedard M. Effectiveness of a bed positioning program for treating older adults with knee contractures who are institutionalized. Phys Ther. 2000;80(4):363-72.



CQ3 他動運動の開始時期はいつがよいか

推奨
推奨度 C1 関節拘縮が発生する前より行ってもよい。


【エビデンスレベル】
脳卒中患者を対象として、発症早期より拘縮予防の治療を開始すべきとするランダム化比較試験1があり、エビデンスレベルIIである。しかし、関節拘縮の予防効果についての言及はない。

【解説】
  • 脳卒中患者29名を無作為に2群に分け、30分間の他動的伸張運動の効果の検証では、発症初期に拘縮予防の治療を開始すべきであるとまとめている1。脊髄損傷者の拘縮を治療・予防するための筋伸張の効果についてのレビュー論文2では、拘縮を発生する前に行うことが発生後から行うよりも効果的であるとしている。しかし、そのもとになっているシステマティック・レビューでは、ハムストリングスの短縮を有する健康人に対するものであり、脊髄損傷者を対象としたものではない。いずれの研究においても関節拘縮の予防効果までは言及できていない。

【参考文献】
1. Turton AJ, Britton E. A pilot randomized controlled trial of a daily muscle stretch regime to prevent contractures in the arm after stroke. Clin Rehabil. 2005;19(6):600-12.
2. Harvey LA, Herbert RD. Muscle stretching for treatment and prevention of contracture in people with spinal cord injury. Spinal Cord. 2002;40(1):1-9.



CQ4 筋萎縮を予防するためにはどのような方法が有効か

推奨
推奨度 C1 筋量を維持するために、離床を勧め、活動性を高めることを行ってもよい。
推奨度 C1 筋量を維持するために、自動運動を行ってもよい。
推奨度 C1 筋量を維持するために、電気刺激療法を行ってもよい。


【エビデンスレベル】
自動運動を行うだけでは筋萎縮を予防することは困難であるとともに、研究的に運動を行わずに筋萎縮の発生状況を比較するという研究モデルは倫理上できないこともあり、エビデンスにつながる研究はみられない。褥瘡予防についての効果判定では症例報告としてもみられないが、種々の総説等では、筋活動の必要性、活動性維持の必要性が示されており、筋量を維持するために活動性を向上させることの必要性は、エキスパートオピニオン1によりエビデンスレベルVIである。
筋量を維持するためには筋活動を行うことが必要とされるが、通常の運動量では不十分であるという健常者を対象とした実験的研究2ならびに術後臥床期間中の筋力増強訓練の効果を検証した症例対照研究3があり、エビデンスレベルIVである。
脊髄損傷者に対して電気刺激療法を行うことで筋断面積の維持・増大に有効であるというケースシリーズが1編4あり、エビデンスレベルVであるが、個々の文献の研究デザインが示されておらず、褥瘡の予防効果までは言及していない。またC4(第4頸椎)の脊髄損傷者の大殿筋に電気刺激療法を実施し、褥瘡を予防したという症例報告5ならびに、脊髄損傷者11名を対象に埋め込み電極による電気刺激を行い、褥瘡の発生リスクの減少をみたというケースシリーズ6がある。

【解説】
  • 臥床による廃用性筋萎縮を防止するために必要とされる運動量は非常に多く、運動をすれば、廃用性筋萎縮を防止できるとは言い切れず、低活動状態が続けば、筋萎縮は避けられない1。したがって、筋量を維持するためには、活動性を高めることが必要である。
  • 通常の日中の活動における筋活動量と筋力増強運動における筋活動量とを比較した結果、日頃、治療場面で行われている回数では、日中活動の筋活動量に全く足りていないとの報告2がある。また、臥床中の運動の筋力増強運動だけでは筋力増強の効果が得られなかったとして荷重の重要性を述べている3
  • グレードIVの褥瘡既往を有する受傷後22年経過した42歳の脊髄損傷者(C4)の大殿筋に対して電気刺激を行ったところ、その後、2年間、皮膚トラブルなく、パートタイム就労が可能であったとの報告4がある。また、埋め込み電極による電気刺激を起居移動動作獲得のために実施し、褥瘡の発生リスクを有していた事例の発生リスクの減少効果がみられた5としている。
  • 脊髄損傷者の骨量減少と筋萎縮に関するケースシリーズ6では、電気刺激療法が筋断面積の維持・増大に有効であることを示しているが、褥瘡の予防効果までは言及していない。褥瘡の発生リスクを減少したという報告はすべて埋め込み電極を用いた電気刺激療法であり、表面電極による電気刺激療法では、筋萎縮予防の効果は期待できるものの褥瘡予防の効果については十分なエビデンスがあるとはいえない。

【参考文献】
1. 江藤文夫.【廃用症候群】老年者の身体的廃用症候群 その成因と対策 筋力低下・筋萎縮.老年精神医学雑誌.2002;13(4):366-71.
2. 市橋則明,他.大腿四頭筋の廃用性筋萎縮を防止するために必要な下肢の運動量について.体力科学.1993;42:461-4.
3. 市橋則明,伊藤浩充,坂本年将,他.臥床が膝屈・伸筋力に与える影響と筋力増強訓練の効果.理学療法学.1991;18(4):397-403.
4. Giangregorio L, McCartney N. Bone loss and muscle atrophy in spinal cord injury: epidemiology, fracture prediction, and rehabilitation strategies. J Spinal Cord Med. 2006;29(5):489-500.
5. Bogie KM, Wang X, Triolo RJ. Long-term prevention of pressure ulcers in high-risk patients: a single case study of the use of gluteal neuromuscular electric stimulation. Arch Phys Med Rehabil. 2006;87(4):585-91.
6. Agarwal S, Triolo RJ, Kobetic R, Miller M, Bieri C, Kukke S, Rohde L, Davis JA Jr. Long-term user perceptions of an implanted neuroprosthesis for exercise, standing, and transfers after spinal cord injury. J Rehabil Res Dev. 2003;40(3):241-52.



CQ5 骨突起部に対するマッサージを行ってもよいか

推奨
推奨度 A 骨突起部に対するマッサージは一般的には行わない。特に、力強いマッサージは行わないことが強く勧められる。


【エビデンスレベル】
褥瘡予防としてのマッサージの効果について検討したシステマティック・レビューが2編12(1997年、2005年)あり、エビデンスレベル I である。また、それ以外にもマッサージをした場合と体位変換のみの場合とを比較したランダム化比較試験が1編3ある。

【解説】
  • 10文献のレビュー1では、皮膚温、皮下血流量の改善についての効果はあるものの、褥瘡発生の危険度の高い患者に対する褥瘡予防としてのマッサージは推奨できないと結論づけている。また、別の12文献のレビュー2では、皮膚温、皮下血流量の改善についてポジティブな結果を報告しているものの統計学的に有意な差がなく、特に骨隆起部に対するマッサージは避けるべきであるという考えを支持するものが多いとまとめている。
  • ブレーデンスケール20点以下の褥瘡ハイリスク者144例を対象に、ランダム化Cross-over試験を行った結果、褥瘡の発生率(Period1,Period2)は、indiff erentクリームを用いたマッサージでは41.9%、13.6%であり、DMSOクリームを用いたマッサージでは62.1%、12.0%であったのに対して体位変換のみでは38.9%、5.9%であり、使用クリーム間に差がなく、体位変換のみとも差がなかったとの報告3がある。
  • WOCN Clinical Practice Guideline4においても「力強いマッサージは避けるべきである」とされている。

【参考文献】
1. Buss IC, Halfens RJ, Abu-Saad HH. The effectiveness of massage in preventing pressure sores: a literature review. Rehabil Nurs. 1997;22(5):229-34, 242.
2. Duimel-Peeters IG, Halfens RJ, Berger MP, Snoeckx LH. The effects of massage as a method to prevent pressure ulcers. A review of the literature. Ostomy Wound Manage. 2005;51(4):70-80.
3. Duimel-Peeters IG, J G Halfens R, Ambergen AW, Houwing RH, P F Berger M, Snoeckx LH. The effectiveness of massage with and without dimethyl sulfoxide in preventing pressure ulcers: a randomized, double-blind cross-over trial in patients prone to pressure ulcers. Int J Nurs Stud. 2007;44(8):1285-95. Epub 2007 Jun 5.
4. Ratliff CR; WOCN. WOCN's evidence-based pressure ulcer guideline. Adv Skin Wound Care. 2005;18(4):204-8.



CQ6 慢性期脊髄損傷者の褥瘡予防にはどのような方法が有効か

推奨
推奨度 C1 慢性期の脊髄損傷者の褥瘡予防には、リハビリテーション専門職とともに接触圧を確認しながら指導する方法を行ってもよい。


【エビデンスレベル】
慢性期脊髄損傷者へのリハビリテーション専門職とともに接触圧を確認しながら指導した内容や結果についての症例報告は国外2編12、国内1編3あり、エビデンスレベルVである。

【解説】
  • 脊髄損傷者は褥瘡による敗血症で亡くなる比率が高い4
  • 脊髄損傷者は車椅子上だけで褥瘡が発生しているわけではない。就寝時、自動車乗車時などすべての活動範囲がリスクとなる5
  • シート状の接触圧測定装置はクッションの選択や姿勢の確認、また姿勢変換時の接触状況など患者へのフィードバックとして使用できる6
  • 脊髄損傷者には極力活動性を維持できる褥瘡予防方法を選択・提案する6

【参考文献】
1. Dover H, Pickard W, Swain I, Grundy D. The effectiveness of a pressure clinic in preventing pressure sores. Paraplegia. 1992;30(4):267-72.
2. Krouskop TA, Noble PC, Garber SL, Spencer WA. The effectiveness of preventive management in reducing the occurrence of pressure sores. J Rehabil R D. 1983;20(1):74-83.
3. 松原裕幸,廣瀬秀行,濱 祐美.胸髄損傷及び股関節離断の重複障害に対する座位保持クッションの製作経験.POアカデミージャーナル.2004;12(1):48-53.
4. Imai K, Kadowaki T, Aizawa Y. Standardized indices of mortality among persons with spinal cord injury: accelerated aging process. Ind Health. 2004;42(2):213-8.
5. 廣瀬秀行,新妻純子,伊集玲子,岩崎 洋,関 寛之.当センター シーティングクリニックにおける褥瘡対応について.日本パラプレジア医学会雑誌.2001;14(1):30-1.
6. 関 寛之.脊髄損傷者の褥瘡リスクマネージメントに関する研究.厚生労働科学研究費補助金(障害保健福祉総合事業).2003.



CQ7 どのような圧再分配クッションを用いるとよいか

推奨
推奨度 C1 圧再分配を意図するクッション間の差はなく、どのようなクッションを使用してもよい。


【エビデンスレベル】
加工したウレタンクッション、各種素材を組み合わせたクッション、臀部形状をもったクッションなどを使用したランダム化比較試験が5編12345あり、エビデンスレベルIIである。しかし、すべての論文とも同じ厚さのウレタンクッションとの比較論文であり、発生率に有意差を認めていない。

【解説】
  • 圧再分配クッションを比較しても褥瘡の発生率に差をみないことより、クッションの使用は推奨できるものの、どのタイプがよいのかについては明言できない。
  • NPUAPではクッションだけでは褥瘡を予防できず、適切な姿勢変換や皮膚観察をすべきであると述べている。

【参考文献】
1. Lim R, Sirett R, Conine TA, Daechsel D. Clinical trial of foam cushions in the prevention of decubitis ulcers in elderly patients. J Rehabil Res Dev. 1988;25(2):19-26.
2. Conine TA, et al. Pressure sore prophylaxis in elderly patients using slab foam or customized contoured foam wheelchair cushions. Occup Ther J Res. 1993;13:101-16.
3. Conine TA, Hershler C, Daechsel D, Peel C, Pearson A. Pressure ulcer prophylaxis in elderly patients using polyurethane foam or Jay wheelchair cushions. Int J Rehabil Res. 1994;17(2):123-37.
4. Banks S, Bridel J. A descriptive evaluation of pressure-reducing cushions. Br J Nurs. 1995;4(13):736, 738, 740 passim.
5. Collins F. The contribution made by an armchair with integral pressure-reducing cushion in the prevention of pressure sore incidence in the elderly, acutely ill patient. J Tissue Viability. 1999;9(4):133-7.



CQ8 連続座位時間を制限してもよいか

推奨
推奨度 C1 自分で姿勢変換ができない高齢者は、連続座位時間の制限を行ってもよい。


【エビデンスレベル】
自分で姿勢変換ができない場合の推奨事項の記載はエキスパートオピニオン以外になく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • 自分で姿勢変換ができない場合、EPUAP1では2時間以内とし、NPUAP2では1時間以内としている。
  • 座位姿勢にはリクライニング車椅子を30度程度起こした状態でも座位時間は制限されるべきであるとCMS3(CMS:Centers for Medicare and Medicaid Services)では述べている。

【参考文献】
1. EUROPEAN PRESSURE ULCER ADVISORY PANEL: Pressure Ulcer Prevention Guidelines,
http://www.epuap.org/glprevention.html
2. NATIONAL PRESSURE ULCER ADVISORY PANEL: Pressure Ulcer Prevention Points*IV. Mechanical Loading and Support Surfaces: http://www.npuap.org/PU_Prev_Points.pdf
3. Pub. 100-07 State Operations Provider Certification, Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS). Transmittal 4 Date: NOVEMBER 12, 2004 SUBJECT: Guidance to Surveyors for Long Term Care Facilities. CMS Manual System Department of Health & Human Services (DHHS).



CQ9 姿勢変換はどれくらいの間隔で行えばよいか

推奨
推奨度 C1 自分で姿勢変換ができる場合には、15分おきに姿勢変換を行ってもよい。


【エビデンスレベル】
姿勢変換の間隔についての推奨事項の記載はエキスパートオピニオン以外になく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • CMS1では10〜15秒程度の姿勢変換(プッシュアップ)の有効性について疑問を投げている。

【参考文献】
1. Pub. 100-07 State Operations Provider Certification, Centers for Medicare & Medicaid Services (CMS). Transmittal 4 Date: NOVEMBER 12, 2004 SUBJECT: Guidance to Surveyors for Long Term Care Facilities. CMS Manual System Department of Health & Human Services (DHHS).



CQ10 座位姿勢を考慮することは有効か

推奨
推奨度 C1 座位姿勢のアライメント、バランスなどの考慮を行ってもよい。


【エビデンスレベル】
座位姿勢を考慮することに関する推奨事項の記載はエキスパートオピニオン以外になく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • NPUAP1ではクッションだけでは褥瘡を予防できず、適切な姿勢変換や皮膚観察をすべきであると述べている。
  • AHCPR2では座位姿勢についてリハビリテーション専門職への関与を述べている。

【参考文献】
1. NATIONAL PRESSURE ULCER ADVISORY PANEL: Pressure Ulcer Prevention Points*IV. Mechanical Loading and Support Surfaces: http://www.npuap.org/PU_Prev_Points.pdf
2. AHCPR Supported Clinical Practice Guidelines. 3. Pressure Ulcers in Adults: Prediction and Prevention, Clinical Practice Guideline Number 3, AHCPR Pub. No. 92-0047: 1992.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?rid=hstat2.chapter.4409



CQ11 円座を用いることは有効か

推奨
推奨度 D 円座は用いないように勧められる。


【エビデンスレベル】
円座の使用に関する推奨事項の記載はエキスパートオピニオン以外になく、エビデンスレベルVIである。

【解説】
  • AHCPR1において「使うべきではないC」で掲載されており、また、他のガイドラインでは圧再分配クッションを用いるべきであるとし円座を用いないことが基本となっている。
  • 踵骨部に円座を用いることで、皮膚が引っ張られ、円座との接触部位が虚血になるとされており2、円座使用の危険性を示す。

【参考文献】
1. AHCPR Supported Clinical Practice Guidelines. 3. Pressure Ulcers in Adults: Prediction and Prevention, Clinical Practice Guideline Number 3, AHCPR Pub. No. 92-0047: 1992.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?rid=hstat2.chapter.4409
2. 厚生省老人保健福祉局老人保健課 監修.褥瘡の予防・治療ガイドライン.照林社,東京.1998;14-5.



GPP(Good Practice Point)一覧:ワンポイント・アドバイス
事項 解説
ベッド上での動作時・他動運動時には、皮膚・皮下組織のずれが起こることに留意する 身体を動かしたとき、皮膚ならびに皮下組織は筋の収縮等によって動き、その動きが大きなずれ力につながる。早期からリハビリテーションを実施していく上でのリスク管理として、褥瘡の発生要因となりうる起き上がり動作や他動運動に伴う皮膚・皮下組織のずれや考慮されない座位姿勢保持でのずれに注意を払うことが求められる
リハビリテーション介入は、硬いベッド上でのプログラムを避けるようにする 硬いベッド上でのプログラムは、姿勢の安定性や動作の獲得のため必要であるという考え方がある一方、ベッド面の硬さは褥瘡を引き起こす要因となるという考え方もある。理学療法・作業療法・言語聴覚療法実施中のベッドの硬さによって、直接、褥瘡を引き起こしたという報告はないが、褥瘡を引き起こす危険性が高くなる硬いベッド上でのプログラムは避けるようにする
リハビリテーション介入時は、長時間同一姿勢を保持したプログラムを避けるようにする 同一姿勢を保持したプログラムを実施した場合に、褥瘡が発生するかどうか研究的に確認することはできない。しかしながら、同一部位に対する外力の持続につながり、褥瘡を引き起こす要因となるため、理学療法・作業療法・言語聴覚療法実施中に同一部位に外力が持続的に加わらないように注意を払う必要性がある
関節拘縮を予防するために、関節拘縮の最大の原因である不動を解消するために、姿勢変換を含む自動運動を行ってもよい 麻痺やギプス固定等で関節を不動にすることが関節拘縮の要因であるとともに、他動運動によって関節可動域が改善することは諸家の意見が一致しているところである。しかし、種々の介入を行っても関節拘縮を予防できるという十分なエビデンスはない。よって、関節拘縮の予防のためには、活動性を高めることが必要であり、自動運動を行ってもよい
車椅子を使用する高齢者の褥瘡予防には、圧再分配を意図するクッションを使用してもよい ウレタンクッションの使用は、諸外国においては当然のことであり、本邦の高齢者施設のようにクッションを使用しない状態や単独で円座、座布団等を使用して座位姿勢をとらせ、褥瘡の発生を検討する研究はなされていない。褥瘡のリスクがある場合、厚さ5cm以上の褥瘡予防を意図したクッションを選択すべきである。

 

 
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