(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン
第2章 褥瘡の予防と発生後のケア
褥瘡の予防と発生後のケア Clinical Questions
褥瘡の予防
3.圧迫・ずれの排除
A.体位変換
CQ1 | ベッド上では、何時間毎の体位変換が有効か |
推奨
推奨度 C1 | マットレスを使用する場合は、基本的には2時間毎に(2時間を超えない)体位変換を行ってもよい。 |
【エビデンスレベル】
減圧マットレスを使用する際には最低2〜4時間毎、減圧効果のないマットレスを使用する際には最低2時間毎に体位変換させ褥瘡発生予防の効果を検討したランダム化比較試験が1編1あり、エビデンスレベルIIとなるが、日本人に対する検討は行われていない。
【解説】
- ナーシングホーム入所者838名に対し、マットレスの種類別に体位変換時間を変えたランダム化比較試験1があり、減圧マットレス使用下での2〜4時間毎の体位変換は、減圧効果のないマットレス使用下の2〜4時間毎の体位変換より褥瘡発生は低下した。しかし、日本人に対する検討ではない上に、使用しているマットレスも異なる。さらに、本邦では、最低2時間毎に(2時間を超えない)体位変換を行うというエキスパートオピニオン以外にない。
【参考文献】
1. | Defloor T. [Less frequent turning intervals and yet less pressure ulcers] Tijdschr Gerontol Geriatr. 2001;32(4):174-7. |
CQ2 | ベッド上の体位変換では、仰臥位、側臥位以外にどのような体位が有効か |
推奨
推奨度 C1 | 30度側臥位、90度側臥位ともに行ってもよい。 |
【エビデンスレベル】
入院中の患者に対し、30度側臥位と、90度側臥位および仰臥位との比較をしたランダム化比較試験が1編1あり、エビデンスレベルIIとなるが、対象が日本人の体格とは異なる。
【解説】
- 病院入院中の患者23名に対し、30度側臥位と、90度側臥位および仰臥位との比較をしたランダム化比較試験1では、30度側臥位、90度側臥位および仰臥位では、いずれも褥瘡(発赤)の発生を減らさなかった。また、対象が日本人の体格とは異なることも考慮し、30度側臥位は患者の安楽な姿勢に反していると報告されていることに留意する必要がある。
【参考文献】
1. | Young T. The 30 degree tilt position vs the 90 degree lateral and supine positions in reducing the incidence of non-blanching erythema in a hospital inpatient population: a randomised controlled trial. J Tissue Viability. 2004;14(3):88, 90, 92-6. |
CQ3 | 体圧分散用具を利用する場合、何時間ごとの体位変換が有効か |
推奨
推奨度 C1注 | 厚みのあるフォームマットレスを使用する場合には、体位変換間隔は4時間を超えない範囲で行ってもよい注。 |
推奨度 C1 | 2層式エアマットレスを用いる条件下で左右側臥位と仰臥位での体位変換間隔は、4時間を超えない範囲で行ってもよい。 |
- 注:対象者が本邦の褥瘡患者とは体格も異なり、使用している体圧分散マットレスも本邦にはないものであり、安易に適用することにはリスクが伴い、褥瘡を予防することを保証しないことに注意を要する。
【エビデンスレベル】
ナーシングホーム入所者を対象に、標準マットレス下での2時間および3時間体位変換群、体圧分散マットレス(Viscoelastic foam)を用いた4時間および6時間体位変換群の褥瘡発生率を比較したランダム化比較試験が1編1あり、エビデンスレベルIIとなる。しかし、対象者の身体的特徴や使用された体圧分散マットレスが本邦とは異なる。
入院患者を対象に、2層式エアマットレス使用下での左右側臥位と仰臥位での体位変換について、時間間隔の違いによる骨突出部の皮膚発赤の有無と体圧値を比較検討した症例(コホート)研究が1編2あり、エビデンスレベルIVとなる。
入院患者を対象に、2層式エアマットレス使用下での左右側臥位と仰臥位での体位変換について、時間間隔の違いによる骨突出部の皮膚発赤の有無と体圧値を比較検討した症例(コホート)研究が1編2あり、エビデンスレベルIVとなる。
【解説】
- ナーシングホーム入所者838名を対象に、標準的な予防ケア群(576名)以外の、標準マットレス下での2時間体位変換群(65名)、標準マットレス下での3時間体位変換群(65名)、体圧分散マットレス(Viscoelastic foam)を用いた4時間体位変換群(67名)、体圧分散マットレスを用いた6時間体位変換群(65名)の褥瘡発生率を比較したランダム化比較試験1では、グレード I の褥瘡発生率に差がなかった。この体圧分散マットレスを用いた4時間体位変換群では、グレードII以上の発生(3.0%)が有意に少なく、IV度の褥瘡は未発生であった。ただし、対象者が本邦の褥瘡患者とは体格も異なり、使用している体圧分散マットレス(Viscoelastic foam)も本邦にはないものであり、外的妥当性という点では安易に適用することはリスクを伴い、褥瘡を予防することも保証していない。
- 入院患者16名を対象に、2層式エアマットレス使用下での左右側臥位と仰臥位での体位変換について、時間間隔2時間、4時間、5時間による骨突出部の皮膚発赤の有無と体圧値を比較検討した症例(コホート)研究2では、時間間隔2時間、4時間では発赤なし、5時間では50%に発赤をみとめたと報告している。
【参考文献】
1. | Defloor T, De Bacquer D, Grypdonck MH. The effect of various combinations of turning and pressure reducing devices on the incidence of pressure ulcers. Int J Nurs Stud. 2005;42(1):37-46. |
2. | 中島房代,豊田恒良:体位変換の時間を2時間以上とした症例の検討.日本褥瘡学会誌.2003;5(1-1):37-41. |