(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン

 
序文


10.推奨度
A 行うよう強く勧められる
B 行うよう勧められる
C1 行うことを考慮しても良いが、十分な根拠がない
C2 根拠がないので、勧められない
D 行わないよう勧められる
根拠とは臨床試験や疫学研究による知見を指す。

推奨度Aの判定には少なくとも1つの有効性を示すレベルIのエビデンスがあることを条件とした。また、レベルIの結果が1つあっても、そのランダム化比較試験の症例数が十分でなかったり、企業主導型の論文が1つしか存在せず、再検討がいずれ必要と委員会が判定した場合は、グレードを一段階下げてBと判定した。推奨度Bの判定には少なくとも1つの有効性を示すレベルIIのエビデンスがあることを条件とした。
推奨度の明示は診療ガイドラインに期待される最も重要な役割の1つであるが、どのような要因を考慮して推奨度を決定することが望ましいかについては多くの議論がある。本策定委員会では、福井・丹後の提案、GRADE(Grades of Recommendation Assessment, Development and Evaluation)グループの提案を参照し、以下の要素を勘案して総合的に判断した。


  • エビデンスのレベル
  • エビデンスの質
  • エビデンスの一貫性(複数の研究による支持)
  • 直接性(臨床的有効性の大きさ、外的妥当性、間接的なエビデンス、代理アウトカムでの評価)
  • 臨床上の適用性
  • 害やコストに関するエビデンス

その結果、本ガイドラインでは「C1:行うことを考慮しても良いが、十分な根拠がない」の判定が多くなっている。この推奨度は、対照群に比べて臨床試験でも観察研究でも当該介入の有効性を示すエビデンスがなく、症例集積の文献とガイドライン策定委員による臨床経験(エキスパートオピニオン)によって有効性、安全性が評価された介入方法に対して付与された。本ガイドラインでC1の判定が多いことは、褥瘡の局所管理に関する質の高いエビデンスが限られている実状を反映している。今後、褥瘡管理の領域での臨床研究・疫学研究の充実が強く期待される。
予防に関するガイドラインには、臨床的なワンポイントアドバイスとして新しく推奨度とは別の“GPP”を一部に用いている。GPP(Good Practice Point)は英国(イングランド、スコットランド)の診療ガイドラインで用いられているものである。診療ガイドライン作成グループが「臨床的に重要」と強調すべきと感じているが、研究によるエビデンスがない、または研究を行うことが期待できない項目(研究に馴染まない)、いわば、“clinical common sense”に関して、経験のある臨床家が助言を行うような内容がGPPとして記述される。局所管理同様、予防に関しても臨床研究・疫学研究の充実への期待は高まるばかりである。
また、このようにエビデンスが明確でない場合の意思決定の基準として、カナダの集団検診に関するガイドライン作成班は次の提案を行っている。個々の臨床状況ではこれらの項目を参照して、C1と判定された介入は、その必要性、妥当性を十分に検討した上で実施するか否かを判断することが望まれる。

 

 
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