(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン
褥瘡予防・管理ガイドライン
Quick Reference
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推奨度
A | 行うよう強く勧められる |
B | 行うよう勧められる |
C1 | 行うことを考慮しても良いが、十分な根拠*がない |
C2 | 根拠*がないので、勧められない |
D | 行わないよう勧められる |
*根拠とは臨床試験や疫学研究による知見を指す。
褥瘡の予防と発生後のケア |
褥瘡の予防
1.皮膚の観察
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 発赤・d1褥瘡を判別するにはどのような方法を用いるとよいか | ガラス板圧診法、または指押し法を用いてもよい。 | C1 |
2.褥瘡発生の予測
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 褥瘡発生予測にリスクアセスメント・スケールを用いることは有効か | リスクアセスメント・スケールを用いることが勧められる。 | B |
CQ2 | 一般的にはどのようなリスクアセスメント・スケールを用いるとよいか | ブレーデンスケールを使用することが勧められる。 | B |
CQ3 | 高齢者では、ブレーデンスケール以外にどのような評価方法、あるいは有用なスケールを用いるとよいか | 褥瘡発生危険因子による評価を行ってもよい。 | C1 |
高齢寝たきり患者においては、OHスケールを使用してもよい。 | C1 | ||
CQ4 | 寝たきり入院高齢者では、どのようなリスクアセスメント・スケールを用いるとよいか | K式スケールを使用してもよい。 | C1 |
CQ5 | 在宅高齢者では、どのようなリスクアセスメント・スケールを用いるとよいか | 在宅版褥瘡発生リスクアセスメント・スケールを使用してもよい。 | C1 |
CQ6 | 小児の患者にはどのようなリスクアセスメント・スケールを用いるとよいか | ブレーデンQスケールを使用してもよい。 | C1 |
CQ7 | 脊髄損傷者にはどのようなリスクアセスメント・スケールを用いるとよいか | SCIPUSスケールを使用してもよい。 | C1 |
3.圧迫・ずれの排除
A.体位変換
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | ベッド上では、何時間毎の体位変換が有効か | マットレスを使用する場合は、基本的には2時間毎に(2時間を超えない)体位変換を行ってもよい。 | C1 |
CQ2 | ベッド上の体位変換では、仰臥位、側臥位以外にどのような体位が有効か | 30度側臥位、90度側臥位ともに行ってもよい。 | C1 |
CQ3 | 体圧分散用具を利用する場合、何時間毎の体位変換が有効か | 厚みのあるフォームマットレスを使用する場合には、体位変換間隔は、4時間を超えない範囲で行ってもよい注。 注:対象者が本邦の褥瘡患者とは体格も異なり、使用している体圧分散マットレスも本邦にはないものであり、安易に適用することにはリスクが伴い、褥瘡を予防することを保証しないことに注意を要する | C1注 |
2層式エアマットレスを用いる条件下で左右側臥位と仰臥位での体位変換間隔は、4時間を超えない範囲で行ってもよい。 | C1 |
B.体圧分散用具
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 褥瘡発生率を低下させるために体圧分散マットレスを使用することは有効か | 体圧分散マットレスを使用することが強く勧められる。 | A |
CQ2 | 高齢者の褥瘡発生予防にはどのような体圧分散マットレスを用いたらよいか | 2層式エアマットレスの使用が勧められる。 | B |
上敷静止型エアマットレスを使用してもよい。 | C1 | ||
圧切替型エアマットレスを使用してもよい。 | C1 | ||
フォームマットレスを使用してもよい。 | C1 | ||
CQ3 | 急性期患者の褥瘡発生予防にはどのような体圧分散用具を用いたらよいか | 低圧保持エアマットレスの使用が勧められる。 | B |
ローエアロスベッドを使用してもよい。 | C1 | ||
上敷圧切替型マットレスを使用してもよい。 | C1 | ||
交換静止型エアマットレスを使用してもよい。 | C1 | ||
CQ4 | 周術期患者の褥瘡発生予防にはどのような体圧分散用具を用いたらよいか | 術後には、圧切替型エアマットレスの使用が勧められる。 | B |
術中には、マットレス以外に踵骨部、肘部等の突出部にゲルまたは粘弾性パッドの使用が勧められる。 | B | ||
大腿骨頸部骨折術後には、フォームマットレス、ビーズベッドシステムを使用してもよい。 | C1 |
4.スキンケア
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 尿・便失禁がある場合、褥瘡発生予防にどのようなスキンケアを行うとよいか | 洗浄剤による洗浄に加えて皮膚保護のためのクリーム等を肛門から臀部範囲の皮膚に用いてもよい。 | C1 |
CQ2 | 高齢者の骨突出部位の褥瘡発生予防に、どのようなスキンケアを行うとよいか | 高齢者の骨突出部位にポリウレタンフィルムドレッシング材、すべり機能つきドレッシング材を貼付することが勧められる。 | B |
CQ3 | 仰臥位手術患者の場合、褥瘡発生予防にどのようなスキンケアを行うとよいか | 仰臥位手術患者の仙骨部にポリウレタンフィルムドレッシング材の貼付を行ってもよい。 | C1 |
5.栄養管理
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 低栄養患者の褥瘡予防には、どのような栄養介入を行うとよいか | 蛋白質・エネルギー低栄養状態(protein-energy malnutrition:以下PEM)患者に対して高エネルギー、高蛋白質のサプリメントによる補給を行うことが勧められる。 | B |
CQ2 | 経口摂取が不可能な褥瘡患者の栄養補給はどのようにすればよいか | 経腸栄養、経静脈栄養によるエネルギー、水分の補給を行ってもよい。 | C1 |
CQ3 | 褥瘡発生の危険因子となる低栄養状態を評価するために、何をアセスメントすればよいか | 血清アルブミン値を用いてもよい。 | C1 |
体重減少を用いてもよい。 | C1 | ||
喫食率(食事摂取量)を用いてもよい。 | C1 | ||
SGA(Subjective global assessment:主観的包括的栄養評価)を用いてもよい。 | C1 |
6.リハビリテーション
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | リハビリテーション介入は、早期から行ってもよいか | 関節拘縮ならびに筋萎縮を含む廃用症候群を予防するために、十分なリスク管理のもと、早期からリハビリテーション介入を行うことが勧められる。 | B |
CQ2 | 関節拘縮を予防するために他動運動を行ってもよいか | 自動運動が困難な場合には、徒手的・愛護的な他動運動を行ってもよい。 | C1 |
CQ3 | 他動運動の開始時期はいつがよいか | 関節拘縮が発生する前より行ってもよい。 | C1 |
CQ4 | 筋萎縮を予防するためにはどのような方法が有効か | 筋量を維持するために、離床を勧め、活動性を高めることを行ってもよい。 | C1 |
筋量を維持するために、自動運動を行ってもよい。 | C1 | ||
筋量を維持するために、電気刺激療法を行ってもよい。 | C1 | ||
CQ5 | 骨突起部に対するマッサージを行ってもよいか | 骨突起部に対するマッサージは一般的には行わない。特に、力強いマッサージは行わないことが強く勧められる。 | A |
CQ6 | 慢性期脊髄損傷者の褥瘡予防にはどのような方法が有効か | 慢性期の脊髄損傷者の褥瘡予防には、リハビリテーション専門職とともに接触圧を確認しながら指導する方法を行ってもよい。 | C1 |
CQ7 | どのような圧再分配クッションを用いるとよいか | 圧再分配を意図するクッション間の差はなく、どのようなクッションを使用してもよい。 | C1 |
CQ8 | 連続座位時間を制限してもよいか | 自分で姿勢変換ができない高齢者は、連続座位時間の制限を行ってもよい。 | C1 |
CQ9 | 姿勢変換はどれくらいの間隔で行えばよいか | 自分で姿勢変換ができる場合には、15分おきに姿勢変換を行ってもよい。 | C1 |
CQ10 | 座位姿勢を考慮することは有効か | 座位姿勢のアライメント、バランスなどの考慮を行ってもよい。 | C1 |
CQ11 | 円座を用いることは有効か | 円座は用いないように勧められる。 | D |
7.患者教育
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 褥瘡発生、再発を予防するために患者やその家族(介護者)へ指導・教育をどのように行えばよいか | 体位変換方法、予防具の種類や使用方法に関する内容の指導・教育を行ってもよい。 | C1 |
褥瘡の病態、危険因子、褥瘡ステージ、創傷治癒の原則、栄養管理方法、スキンケアと皮膚観察方法、排泄管理方法に関する内容の指導・教育を行ってもよい。 | C1 | ||
CQ2 | 褥瘡発生、再発を予防するために、患者やその家族(介護者)へ退院後どのように継続教育を行えばよいか | 医療者からの定期的な電話によるコンサルテーションを行ってもよい。 | C1 |
遠隔操作による画像を介して、定期的な医療者による皮膚アセスメントを行ってもよい。 | C1 |
褥瘡発生後のケア
1.皮膚の観察
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | d1褥瘡を判別するにはどのような方法を用いるとよいか | d1の予後予測には二重発赤、骨突出部から離れた位置の発赤サインの観察を行ってもよい。 | C1 |
CQ2 | DTI(deep tissue injury)を判別するにはどのような方法を用いるとよいか | 触診によって近接する組織と比較し、硬結・泥のような浮遊感・皮膚温の変化(温かい・冷たい)を観察する方法を用いてもよい。 | C1 |
超音波画像診断法を使用してもよい。 | C1 |
2.体圧分散用具
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 褥瘡(d1、d2あるいはD3〜D5)の治癒促進には、どのような体圧分散用具を使用するとよいか | D3〜D5褥瘡または複数部位の褥瘡の治癒促進には、空気流動型ベッドまたはローエアロスベッドの使用が強く勧められる。 | A |
d2以上の褥瘡の治癒促進には、上敷静止型エアマットレス、マット内圧自動調整機能付交換圧切替型エアマットレス、低圧保持用上敷エアマットレス、2層式エアマットレスを使用してもよい。 | C1 | ||
d1褥瘡の治癒促進には、上敷静止型エアマットレスを使用してもよい。 | C1 |
3.スキンケア
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 褥瘡治癒促進のために、褥瘡周囲皮膚の洗浄にはどのような皮膚洗浄剤を使用するとよいか | 弱酸性洗浄剤を使用してもよい。 | C1 |
CQ2 | 尿・便失禁がある場合、褥瘡治癒促進のためにどのようなスキンケアを行うとよいか | 洗浄剤による皮膚洗浄に加えて皮膚保護のためのクリーム等を褥瘡周囲皮膚に用いてもよい。 | C1 |
4.栄養管理
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 褥瘡患者には栄養評価を行ったほうがよいか | 栄養評価を実施し、必要な症例に対して栄養管理計画作成を行ってもよい。 | C1 |
CQ2 | 栄養投与はどのような内容がよいか | エネルギー必要量に見合ったエネルギーと蛋白質を投与することが勧められる。 | B |
CQ3 | 褥瘡患者に特定の栄養素を補給することは有用か | 亜鉛、アルギニン、アスコルビン酸などが欠乏しないよう補給することを行ってもよい。 | C1 |
CQ4 | 褥瘡患者に栄養ケアのコンサルテーションは有用か | 栄養に関するコンサルテーションは有用であり、NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)などの栄養ケア専門チームあるいは管理栄養士に相談を行ってもよい。 | C1 |
5.リハビリテーション
項目 |
GPP(Good Practice Point)参照 |
6.患者教育
項目 | 推奨 | 推奨度 | |
CQ1 | 褥瘡がすでに発生している場合は、患者やその家族(介護者)にケア指導・教育をどのように行えばよいか | 異常の際の医療機関への連絡方法に関する情報提供を行ってもよい。 | C1 |