(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第5章 放射線療法

 
B.密封小線源永久挿入治療(単独)
CQ2  〔適切な照射線量〕密封小線源永久挿入治療(単独)での至適線量はどのようなものか?

推奨グレード B
米国での処方線量は144Gyが一般的である。わが国では小線源治療が始まって間もないために,安全性確保のために線量計算やその評価は先行するABS(American Brachytherapy Society)のガイドラインを参照することを推奨する1),2)

 背 景
放射線治療における抗腫瘍作用は線量依存性であるが,照射線量が増加するとそれによる有害事象の発生頻度も増加する。密封小線源永久挿入治療における処方線量と腫瘍抑制効果を検討した研究において線量が増加するほど腫瘍の抑制が得られ,140Gy以上と未満で比較すると有意な治療効果の差が認められた3)

 解 説
物理的な線量計算については,米国物理医学協会のグループNo.43(TG-43)による線量計算アルゴリズムが使用される。この方法に従った線量計算を行い,処方線量を144Gyとすることが推奨されている1)(IV)
術後に実際に照射された線量を確認するために術後線量評価を行うことをABSは推奨している1),2)(IV)。実際にはCTを術後に行い,それに基づき線量計算を行う。術直後は浮腫や出血により前立腺体積を過剰評価する傾向があり,術後4週後頃に線量評価を行う方が正確であると報告されている。しかし,術直後の評価の方が実際的であり,最適な評価時期についてのコンセンサスはない。術後評価の指標として,実際の線量分布を各断面で確認することと,線量体積ヒストグラムを用いることをABSは推奨している。前立腺体積の80%,90%,100%をカバーする線量であるD80,D90,D100および処方線量の80%,90%,100%,150%,200%が投与された前立腺容積の割合であるV80,V90,V100,V150,V200の報告を勧めている。D90が140Gy以上である場合,それ未満に比べてPSA再発率が明らかに低いことがStockらにより示されている3),4)(III)
また,直腸や尿道の線量評価も行うべきである。尿道の最高線量が360Gy(TG-43)を超えると尿道の合併症が生じやすいことが報告されている2)(IV)。処方線量の200%を超えないようにする必要がある。直腸寄りの線源は前立腺被膜から3mm離して留置することが望ましく,直腸の最高線量が200Gy以下であれば重篤な直腸合併症は避けられると報告されている5)(III)


 参考文献
1) Nag S, Beyer D, Friedland J, et al. The American Brachytherapy Society(ABS)recommendation for transperineal permanent brachytherapy of prostate cancer. Int J Radiat Oncol. Biol Phys. 1999;44(4):789-99.
2) Nag S, Bice W, DeWyngaert K, et al. The American Brachytherapy Society recommendation for permanent prostate brachytherapy postimplant dosimetric analysis. Int J Radiat Oncol Biol phys. 2000;46(1):221-30.
3) Stock RG, Stone NN, Tabert A, et al. A dose-response study for I-125 prostate implants. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1998;41(1):101-8.
4) Kollmeier MA, Stock RG, Stone N. Biochemical outcomes after prostate brachytherapy with 5-year minimal follow-up:importance of patient selection and implant quality. Int. J. Radiat Oncol Biol Phys. 2003;57(3):645-53.
5) Waterman MF, et al. Is it necessary to eliminate the posterior dose margin in prostate brachytherapy to achieve an acceptable low risk of late rectal morbidity? Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2003;57(1):293-9.

 

 
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