(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第5章 放射線療法

 
A.外照射
CQ5  〔内分泌療法の併用〕外照射において,内分泌療法の併用は有用か?

1.アジュバント内分泌療法
推奨グレード B
65-70Gyの外照射の場合,主として高リスク群に対してアジュバント内分泌療法の併用が推奨される。
(*ただし,最適な投与期間,併用方法および70Gyを超えた線量増加(dose escalation)における有用性についての結論は出ていない)

 背 景
これまで中〜高リスク群を対象に,外照射単独療法と外照射療法に加えて長期内分泌療法(アジュバント中心)併用に関する無作為化比較試験が行われてきた。一方,低リスク群の外照射単独の治療成績は手術結果とほぼ同等と良好であり,正式には検証はされていないものの内分泌療法併用の利点は少ないとされている。

 解 説
T3またはリンパ節陽性例に対する外照射単独療法群(全骨盤44-46Gy,総線量65-70Gy)と外照射の最終週よりゴセレリンを投与可能な限り継続投与した群との無作為化比較試験の結果,10年の長期経過観察においてアジュバント内分泌療法併用群において有意な全生存率の改善(53%vs.38%)が認められた1)(II)。また,高リスク例(89%がT3-4,89%はN0)を対象とした,外照射単独療法群(70Gy,内全骨盤照射50Gy)と外照射と同時にゴセレリン投与を開始した(投与期間3年)群との無作為化比較試験では,5年無病生存率(74%vs.40%),5年全生存率(78%vs.62%)ともに併用群が良好であった2)(II)。一方,T2c-4(T2cが45%)かつPSA 150ng/ml未満を対象にした,65-70Gy(内全骨盤44-50Gy)と4カ月間(ネオアジュバント,同時併用各2カ月)の短期total androgen blockade(TAB)療法群と前記治療加えて2年間の長期アジュバント内分泌療法(ゴセレリン単独)を追加した群との無作為化比較試験においては,5年全生存率に有意差を認めなかった(80%vs.78.5%)3)(II)。しかし,Gleasonスコア8-10症例のみのサブセット解析では,長期アジュバント内分泌療法併用群で全生存率の有意な改善が認められた(81.0%vs.70.7%,P=0.044)。さらにRTOG75-04,77-06,85-31,86-10のメタアナリシスの結果,T3,Gleasonスコア7またはGleasonスコア8-10の患者群は,長期内分泌療法の恩恵を受けたと報告されている4)
以上より,65-70Gyの外照射にアジュバント内分泌療法の併用は,高リスク群中心に生存率の改善に寄与することが示唆されている。最適な投与期間は不明であるが,positiveな結果が得られているのは3年以上の長期間の併用である。しかし,中・高リスク群(PSAが10ng/mlから40ng/ml,Gleasonスコア7以上,または画像上T3の所見がある例)を対象に,70Gyの3D-CRTによる局所(前立腺+精嚢)照射単独群と放射線治療に6カ月間のTAB療法(ネオアジュバント,同時併用,アジュバント,それぞれ2カ月ずつ)併用群をランダマイズした結果,5年全生存率が有意に併用群で良好であった(88%vs.78%,p=0.04)5)(II)。ネオアジュバント内分泌療法として投与を開始すると,6カ月間の内分泌療法でも生存率を改善できる可能性が示唆される結果である。しかし,長期アジュバント内分泌療法と短期ネオアジュバント内分泌療法との併用を直接比較した無作為化試験はない。また,現在の標準線量になりつつある74-78Gyに線量増加した場合の有用性についても検証されていない。

 

 
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