(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第5章 放射線療法

 
A.外照射
CQ4  〔照射範囲〕根治的外照射の照射範囲に所属リンパ節領域を含めることは有用か?

推奨グレード C
前立腺癌に対する根治的放射線療法において予防的骨盤照射の有用性は確立されていない。

 背 景
Partin tableなどのノモグラムを使用すれば,T stage,PSA値,Gleasonスコアなどから潜在的なリンパ節転移の確率をある程度予測することができる。この確率が高い症例に対して予防的な全骨盤照射を併用することにより再発率の低下と生存率の向上を得ることができるかということが研究されてきた。根治的放射線療法では一般に前立腺に対して70Gy以上の線量が用いられるが,全骨盤を対象とした予防的照射では腸管や膀胱の耐容線量が問題となり45-50Gy程度が上限となる。いかに微小転移とはいえこの程度の線量でリンパ節転移が制御できるかどうかという点についても議論がある。

 解 説
AsbellらはT1bN0あるいはT2N0の限局性前立腺癌449症例を対象とした,前立腺照射のみと全骨盤照射併用との無作為化比較試験(RTOG77-06)の結果,両群で生存率の差はなかったとしている。ただし,この研究の初期にはPSAは測定されておらず,患者のリスク分類が現在と異なる可能性がある1)(II)。一方,局所進行性前立腺癌に関しては,RoachらはPSA値が100ng/ml以下で,リンパ節転移のリスクが15%以上の1323症例を対象とした無作為化比較試験(RTOG94-13)で,前立腺のみの照射に比して全骨盤照射併用群で有意に非再発生存率が勝っていたとしている2)(II)。また,単一施設における後ろ向き研究ではあるが,やはり中間リスク群あるいは高リスク群で骨盤照射は前立腺局所照射より有意に無増悪生存率が勝っているとする報告3)(III)4)(III)もある。
RTOG94-13は内分泌療法の併用時期(「放射線治療前・中」か「放射線治療後」か)と全骨盤照射の有無を無作為割り付けした2×2デザインの試験であるが,放射線治療前・中の内分泌療法を併用した場合にのみ全骨盤照射の有用性があるという結果であり,また現在のところ全生存率にも差がみられていないことから日常臨床で全骨盤照射を積極的に推奨するにはさらなる経過観察が必要である。


 参考文献
1) Asbell SO, Martz KL, Shin KH, Sause WT, Doggett RL, Perez CA, et al. Impact of surgical staging in evaluating the radiotherapeutic outcome in RTOG # 77-06, a phas III study for T1BN0 M0(A2)and T2N0 M0(B)prostate carcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1998;40(4):769-82.
2) Roach M, 3rd, DeSilvio M, Lawton C, et al. Phase III trial comparing whole-pelvic versus prostate-only radiotherapy and neoadjuvant versus adjuvant combined androgen suppression:Radiation Therapy Oncology Group 9413. J Clin Oncol. 2003;21(10):1904-11.
3) Pan CC, Kim KY, Taylor JM, et al. Influence of 3D-CRT pelvic irradiation on outcome in prostate cancer treated with external beam radiotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2002;53(5):1139-45.
4) Seaward SA, Weinberg V, Lewis P, et al. Improved freedom from PSA failure with whole pelvic irradiation for high-risk prostate cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1998;42(5):1055-62.

 

 
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