(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第4章 外科治療

 
CQ18  術後PSA再発症例に推奨される救済治療は何か?

推奨グレード C
Low risk群では経過観察もあり得る。PSADTが早い状態では内分泌療法が,その中間的な病態では放射線治療が推奨されるが断定的ではない。

 背景・目的
PSA再発を認めた場合,転移性であれば内分泌療法が第1の治療法であることには異存がない。もし局所にとどまっていることがはっきりしていれば,局所療法である放射線治療により予後が改善するはずである。しかし腫瘍の局在がはっきりする前にPSA再発は起こることが一般的である。この段階でどのような治療が最も生存期間を長く保障できるかについて,検討した。

 解 説
PSA再発を認めた場合,そもそも治療すべきかという問題がある。これは前立腺全摘除術の適応となった病態に依存しており,経過観察も妥当であるという主張もある1)(III)ことは当然である。
悪性度が高いと考えられるGleasonスコア7以上かつPSADT:12カ月未満2)(III)の場合,さらにPSADTが術後3カ月未満の時3)(III),骨転移病変の発症を回避し最終的な予後の改善のために,PSA再発を認めた段階で早期の内分泌療法開始が望ましいとしている。また精嚢浸潤陽性症例は悪性度が高いと判断されるべきであり,救済放射線治療での効果は疑問が大きい4)(III)とされており,このよう病態では内分泌療法が一般的に推奨される。
一方,救済放射線治療も,病態によっては効果が期待できることは当然である5),6)(III)。Gleasonスコア<8の症例ではPSA再発後PSA値が低い(PSA1.0以下7)(III),あるいは0.68)(III))状態で早期に,高線量(64.8Gy)の照射を行えば,救済治療としての良好な結果が得られるとしており,PSA再発を確認した場合,PSA値があまり上昇する前に対応したほうが良い成績が期待できる。ただし高線量の放射線照射を行った場合の合併症に関しては注意が必要である(放射線治療の項目も参照されたい)。
救済放射線治療に内分泌療法を併用するかどうかも問題である。内分泌療法併用により予後が短縮する危険がなければ当然,併用療法は単独治療より予後の改善が認められる可能性が大きいと考えられる。局所前立腺癌に対する根治的放射線治療においては近年盛んに内分泌療法の併用が検討されているが,前立腺全摘除術後PSA再発に対する救済治療に関して,どのような症例がその適応になるかについてのRCTはない。非無作為化試験であるが,PSA再発に対して,放射線療法(66Gy)単独,および放射線療法+MAB療法との比較で,切除断端陽性,被膜外浸潤陽性,精嚢浸潤陽性は放射線療法単独での危険因子であり,このような危険因子がなければMAB併用群の有無によるPSA再発に差を認めないが,上記の危険因子が一つでもあればMAB併用例が良いとしている報告9)(III)もあるがRCTでなく,効果を確定するには限界がある。
どのような症例に対してどのような救済療法を選択することが最終的な予後を最も長く保障できるかについてはいまだcontroversialである。


 参考文献
1) Shinghal R, Yemoto C, McNeal JE, et al. Biochemical recurrence without PSA progression characterizes a subset of patients after radical prostatectomy. Prostate-specific antigen. Urology. 2003;61(2):380-5.
2) Moul JW, Wu H, Sun L, et al. Early versus delayed hormonal therapy for prostate specific antigen only recurrence of prostate cancer after radical prostatectomy. J Urol. 2004;171(3):1141-7.
3) D'Amico AV, Moul JW, Carroll PR, et al. Surrogate end point for prostate cancer-specific mortality after radical prostatectomy or radiation therapy. J Natl Cancer Inst. 2003;95(18):1376-83.
4) Chawla AK, Thakral HK, Zietman AL, et al. Salvage radiotherapy after radical prostatectomy for prostate adenocarcinoma:analysis of efficacy and prognostic factors. Urology. 2002;59(5):726-31.
5) Pisansky TM, Kozelsky TF, Myers RP, et al. Radiotherapy for isolated serum prostate specific antigen elevation after prostatectomy for prostate cancer. J Urol. 2000;163(3):845-50.
6) Duchesne GM, Dowling C, Frydenberg M, et al. Outcome, morbidity, and prognostic factors in post-prostatectomy radiotherapy:an Australian multicenter study. Urology. 2003;61(1):179-83.
7) Song DY, Thompson TL, Ramakrishnan V, et al. Salvage radiotherapy for rising or persistent PSA after radical prostatectomy. Urology. 2002;60(2):281-7.
8) Macdonald OK, Schild SE, Vora SA, et al. Radiotherapy for men with isolated increase in serum prostate specific antigen after radical prostatectomy. J Urol. 2003;170(5):1833-7.
9) Katz MS, Zelefsky MJ, Venkatraman ES, et al. Predictors of biochemical outcome with salvage conformal radiotherapy after radical prostatectomy for prostate cancer. J Clin Oncol. 2003;21(3):483-9.

 

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す