(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第4章 外科治療

 
CQ15  術後再発診断におけるPSA再発の診断基準は?

推奨グレード B
一般的にはカットオフは0.2ng/mlとすべきであり,術後再発診断において高感度PSAを使用すべきではないという意見が多い。ただし何を判定するためのPSA再発かによって定義・解釈は異なる可能性がある。この点はクエスチョン1も参照されたい。

 背景・目的
PSAは前立腺癌の早期発見に寄与したが,根治手術後の再発判定におけるPSAに関してはいくつかの問題をはらんでいる。これはCQ1で概説したとおりであるが,現状ではどのような解釈が一般的か,この点を検討した。

 解 説
前立腺全摘除術により癌が根治していると術後3週以内にPSAは検出限界以下になるとされている1)(III)。PSA値が高ければどこかにPSAを産生している組織があることを示しており,検出不可能な微小転移巣,あるいは断端陽性による骨盤内の残存病変が存在する可能性があると考えられる。今回のガイドライン作成のために約240件の文献がレビューされたが,PSA再発を検討した約120の文献で,その半数にPSA再発の定義の記載があった。そのうち約半数は0.2ng/mlをPSA再発の定義としていたが,他は測定可能,0.2ng/mlかつ連続上昇,あるいは3ポイント連続上昇としており,その定義は様々であり一定のコンセンサスが確立していないことをうかがわせた。
EAUのガイドラインでは「PSAのカットオフ値は0.2ng/mlより低くすべきではない」「PSA再発症例に対して,より早期に補助療法を追加することにより有益な結果が得られるという証拠はない。したがって,超高感度PSAをルーチンの経過観察に用いることの妥当性はない」としている。手術が成功したかどうかの判定には高感度測定は「水面下」の状況を早期に判定できる可能性があり,結果的に手術が不成功に終わったかもしれないという点が,より早くわかることである。しかし上記のEUAのガイドラインでも指摘されているように,そのことにより術後の補助療法を早期に開始することで生命予後が向上するという保障はなく,仮にPSA再発をきたした症例であっても生命予後には関わらない病態であった場合には,「水面下」の動きを早期に知ることのメリットには大きな疑問が残る。したがって現状では補助療法を施行していない前立腺全摘除術後においてはPSA再発のカットオフは0.2ng/mlとすべきであるという意見が多く,現実的と思われる2),3),4)(III)


 参考文献
1) Stamey TA, Kabalin JN, McNeal JE, et al. Prostate specific antigen in the diagnosis and treatment of adenocarcinoma of the prostate. II. Radical prostatectomy treated patients. J Urol. 1989;141(5):1076-83.
2) Schild SE, Wong WW, Novicki DE, et al. Detection of residual prostate cancer after radical prostatectomy with the Abbott IMx PSA assay. Urology. 1996;47(6):878-81.
3) Pound CR, Partin AW, Eisenberger MA, et al.:Natural history of progression after PSA elevation following radical prostatectomy. JAMA. 1999;281(17):1591-7.
4) Freedland SJ, Sutter ME, Dorey F, et al. Defining the ideal cutpoint for determining PSA recurrence after radical prostatectomy. Prostate-specific antigen. Urology. 2003;61(2):365-9.

 

 
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