(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版
第4章 外科治療
10 再発後治療
術後補助療法の是非に関しては,補助療法により癌の悪性度が高まることがない限り,何らかの治療を加味すると予後の向上が期待できることは当然である。逆にそのような治療を受けなくとも予後には影響がなかった,つまり補助療法が不要な症例が存在するはずであり,このことに関する信頼できる試験が実施されていないことがその解釈を困難にする原因である。
前立腺全摘除術におけるリンパ節郭清の結果,リンパ節陽性であった場合には臨床的再発まで待って内分泌療法を施行することは,アジュバント療法に比して有意に予後を悪化させることがRCTで報告されている62)(II)。PSA再発を開始時点とする内分泌療法とアジュバント療法とのRCTによるエビデンスはない。
pT3(-4)N0 M0症例に対するアジュバント放射線治療は,PSA再発のリスクを下げる可能性がある63),64),65)(III)。pT3 N0 M0症例のなかでアジュバント放射線治療の適応に疑問のある病態としてはGleasonスコア7-10かつpT3b症例,あるいは術前PSA高値(25ng/ml以上)であったと報告されている66)(III)。また切除断端陽性症例に対するアジュバント放射線治療に関してはGleasonスコア≧8かつ術前PSA>10.9ng/mlでは,放射線療法を行っても再発リスクが高いと報告されている67)(III)。
放射線治療をアジュバントとして行うか,PSA再発後に救済治療として実施するかについては,アジュバントが良いとする報告68)(III)と,PSA再発まで待っても結果は同等とする報告69)(II)があり,結論は一定していない。