(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版
第4章 外科治療
9 術後経過観察・再発診断
術後PSA再発の基準について,EAUのガイドラインでは「PSAのカットオフ値は0.2ng/mlより低くすべきではない」「PSA再発症例に対して,より早期に補助療法を追加することにより有益な結果が得られるという証拠はない。したがって,超高感度PSAをルーチンのフォローに用いることの妥当性はない」としている。現状では補助療法を施行していない前立腺全摘除術後においてはPSA再発のカットオフは0.2ng/mlとすべきであるという意見が多く,現実的と思われる7),9),54)(III)。しかし,何を判定するためのPSA再発かによりその解釈・定義が変わる可能性があることに注意しなければならない。この点は「4.外科治療のエンドポイントとPSA再発」も参照されたい。
補助療法を施行していない状況では一般的にはPSA再発は再発の最初のイベントと解釈される。PSAが検出できないレベルで再発・転移が起こりうることが報告されているが,これは非常に稀で,未分化型の腫瘍にしか起こらないと考えてよい8),55)(III)とされている。したがってPSA再発が認められない場合には直腸診などの追加の検査は不要である8),55),56),57)(III)。PSA再発が認められた場合には直腸診,経直腸超音波などで異常が認められれば有用な情報が得られるが感度は低い58)(IV),59)(III)。MRIに関しては比較的有用とされるが,ルーチン化する妥当性には疑問視する意見がある60)(IV),61)(III)。