(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第2章 診断

 
CQ13  初回生検でhigh grade PINが認められた場合,即再生検が勧められるか?

推奨グレード B
初回生検でhigh grade prostatic intraepithelial neoplasia(HGPIN)を認めた場合,再生検で高率に癌を認めるため,再生検を行うことを推奨する。ただし,再生検を行う時期についてのエビデンスはない。

 背景・目的
HGPINは前癌病変と考えられており,前立腺生検でHGPINが見つかった場合,他部位にすでに癌が存在するか,または将来癌の発生の可能性があることを意味していると考えられる。初回生検でHGPINを認めた場合,その後の再生検をどのような形で行うのがよいかを検証した。

 解 説
初回生検でlow grade PINが見つかった場合は,その後に癌が見つかる確率は,生検陰性の場合と同等だが,high grade PINが見つかった場合は,その後に癌が見つかる可能性は明らかに高率である1),2)初回前立腺針生検においてHGPINが見つかる可能性は,0.7-16.5%と報告されている。ただし,年齢,直腸診異常の有無,経直腸超音波検査異常の有無,PSA値,生検本数,といった生検対象症例の条件によってこの数字は大きく異なる3)(III)。例えば,生検本数が多ければ,HGPINの検出率も高率である4)(IV)
この初回生検でHGPINが見つかった場合,前立腺癌の検出率にかなりの開きがあるため,再生検を強く推奨するとは言いにくいが,大多数の論文で再生検は有用と結論している。ただし,再生検での前立腺癌の発見率が低いため,再生検の必要はないとする論文も散見され5)(IV),今後HGPIN症例に対する考え方が変わる可能性は残されている。
再生検の方法については,一定のコンセンサスはない。再生検の時期については,1〜62カ月後に行われており,特に3〜9カ月後に行われている報告が多い。また,再生検までの期間が長くなればなるほど,癌の検出率が高い傾向があり,このことはHGPINが前立腺癌の前癌病変であるという考え方を支持している。再生検の本数については,2〜15本で行われており,1990年代の報告では2〜6本が多かったが,2000年以後では10〜12本の報告が多い。再生検部位は,初回生検でHGPINを認めた部位の狙撃生検ではむしろ癌の見落としが多いため,系統的生検が推奨される6)(III)。なお,HGPIN症例のPSA値上昇と再生検での癌の発見の関連はなく,PSAの変動を見て再生検の時期を決めることは推奨されない7)(III)
初回生検でHGPINを認めた症例に対し,さらに2回の再生検を行っても癌を認めなかった場合,3回以上の再生検で癌が見つかることはほとんどないとされているが8)(IV),HGPINは前癌病変という考え方からすると,2回の再生検で打ち切っていいかは多少議論のあるところであろう。
なお,HGPINとは別に,atypical small acinar proliferation(ASAP)(腺癌を疑う小病巣を認めるが,細胞異型や細胞構築などの所見が十分ではなく確定診断に至らない)を認めた場合にも,再生検で21-51%と高率に癌が見つかることが報告されている5)(IV)6)(III)。したがってASAPを認めた症例に対しても再生検を行うことが推奨される。


 参考文献
1) Zlotta AR, Raviv G, Schulman CC. Clinical prognostic criteria for later diagnosis of prostate carcinoma in patients with initial isolated prostatic intraepithelial neoplasia. Eur Urol. 1996;30(2):249-55.
2) Haggman MJ, Macoska JA, Wojno KJ, et al. The relationship between prostatic intraepithelial neoplasia and prostate cancer:critical issues. J Urol. 1997;158(1):12-22.
3) Hoedemaeker RF, Kranse R, Rietbergen JB, Kruger AE, Schroder FH, van der Kwast TH. Evaluation of prostate needle biopsies in a population-based screening study:the impact of borderline lesions. Cancer. 1999;85(1):145-52.
4) Rosser CJ, Broberg J, Case D, et al. Detection of high-grade prostatic intraepithelial neoplasia with the five-region biopsy technique. Urology. 1999;54(5):853-6.
5) Moore CK, Karikehalli S, Nazeer T, et al. Prognostic significance of high grade prostatic intraepithelial neoplasia and atypical small acinar proliferation in the contemporary era. J Urol. 2005;173(1):70-2.
6) Borboroglu PG, Sur RL, Roberts JL, et al. Repeat biopsy strategy in patients with atypical small acinar proliferation or high grade prostatic intraepithelial neoplasia on initial prostate needle biopsy. J Urol. 2001;166(3):866-70.
7) Lefkowitz GK, Taneja SS, Brown J, et al. Followup interval prostate biopsy 3 years after diagnosis of high grade prostatic intraepithelial neoplasia is associated with high likelihood of prostate cancer, independent of change in prostate specific antigen levels. J Urol. 2002;168:1415-8.
8) Kronz JD, Allan CH, Shaikh AA, et al. Predicting cancer following a diagnosis of high-grade prostatic intraepithelial neoplasia on needle biopsy:data on men with more than one follow-up biopsy. Am J Surg Pathol. 2001;25(8):1079-85.

 

 
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