(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第2章 診断

 
CQ4  前立腺癌の診断に年齢階層別PSA基準値は有用か?

推奨グレード B
PSAカットオフ値を年齢階層別基準値とした場合,不必要な生検を回避できるが,感度が低いため癌を見逃す可能性がある。

 背景・目的
効率の良い前立腺癌検診としては,少しでも不必要な前立腺生検を減らし,治療対象となる臨床上意味のある前立腺癌患者を見逃さない工夫が重要である。年齢階層別PSAの検討もその工夫の一つとして非常に重要な意義を持つものと考えられる。

 解 説
Pungliaらは後ろ向き調査を行い,前立腺生検を受けるかどうかをPSA値と年齢,DRE所見,人種などでROC曲線に適合させて検討を行った。その結果,年齢としての因子では,60歳未満ではカットオフ値を4.0ng/ml以上と設定すると,若年者前立腺癌の多くを見逃す可能性があり,カットオフ値を2.5ng/mlとすることを推奨している1)(II)
またItoらは6,744人の日本人男性のマススクリーニングのデータを基に解析し,年齢階層別基準値を求めることで,不必要な前立腺癌の生検を減らし,臨床上意味のある前立腺癌を同定することができると結論している。すなわち年齢階層別基準値を用いることは標準的なPSAカットオフ値よりも有用性が高いことを報告している2)(III)
しかし,CrawfordらはPSAカットオフ値を年齢階層別基準値とした場合は陽性率が高いため不必要な生検を回避できるが,感度が低いため癌を見逃す可能性がある。したがって年齢階層別基準値でなくPSAカットオフ値を4.0ng/mlとすることを推奨している3)(III)
以上の結果より,確かに年齢階層別PSA基準値の設定は意義がありそうであるが,臨床的に意味のある癌の見逃しに関しては,更なる検討が必要かもしれない。


 参考文献
1) Punglia RS, D'Amico AV, Catalona WJ, et al. Effect of verification bias on screening for prostate cancer by measurement of prostate-specific antigen. N Engl J Med. 2003;349:335-42.
2) Ito K, Yamamoto T, Kubota Y, et al. Usefulness of age-specific reference range of prostate-specific antigen for Japanese men older than 60 years in mass screening for prostate cancer. Urology. 2000;56:278-82.
3) Crawford ED, Leewansangtong S, Goktas S, et al. Efficiency of prostate-specific antigen and digital rectal examination in screening, using 4.0ng/mland age-specific reference range as a cutoff for abnormal values. Prostate. 1999;38:296-302.

 

 
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