(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版
第1章 疫学
CQ12 | 日本において前立腺癌検診により癌がどのくらい発見されているのか? |
前立腺癌検診での癌発見率は検査方法,年齢分布,複数回検診受診者の比率,生検施行率等によって変わるが,1989年から1999年の全国調査では約0.9%であり,他の癌検診と比較して高い。 |
(財)前立腺研究財団・前立腺検診協議会が行っている全国集計1)では,1989年〜1999年の197,682人の集計結果では,1,695人(0.86%)で癌が発見された。前立腺癌発見率は,PSA検査が市町村検診で導入され,経直腸的超音波ガイド下の前立腺生検法が行われはじめた1993年以降に上昇が認められ,1995年には1.29%と高くなった。その後0.80〜0.93%と低下しているが,複数回検診受診者が増加しているためと考えられる。
年代別の前立腺癌発見率は,1995年から1999年の(財)前立腺研究財団の前立腺集団検診全国集計では,PSA測定のみによる前立腺癌検診では,50〜54歳では0.09%,55〜59歳では0.22%,60〜64歳では0.42%,65〜69歳では0.83%,70〜74歳では1.25%,75〜79歳では1.75%と報告されている。
検査方法別の前立腺癌症例数・発見率は1995年〜1999年の全国集計では,PSA検査のみを用いた検診では0.87%,PSAと直腸診の併用検診では1.25%であった。
前立腺癌検診導入による臨床病期の変遷については,PSA検査導入前の外来発見癌では,転移癌の比率が約60%を占めていたが,PSA検査導入後の検診発見癌では転移癌の割合は約10%まで低下した2)。1995年〜1999年の全国集計での発見前立腺癌の臨床病期分布については,病期B(限局癌)は64.5%,病期C(局所浸潤癌)は24.2%,病期D(周囲浸潤癌,転移癌)は11.0%であった1)。
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1) | 財団法人 前立腺研究財団,前立腺検診協議会:人間ドック健診における前立腺検査調査(1989年〜1999年)・前立腺集団検診全国集計(1986年〜1999年).泌尿器外科.2003;16:1023-38. | |
2) | Kubota Y, Ito K, Imai K, et al. Effectiveness of mass screening for the prognosis of prostate cancer patients in Japanese communities. Prostate. 2002;50:262-9. |
注)疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の3部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community-basedかhospital-basedかの2点を明記した。