(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第1章 疫学

 
CQ5  前立腺肥大症と前立腺癌の関係はどのようになっているのか?

前立腺肥大症と癌が同時に発生することがあるため,排尿症状を訴えて外来受診する症例には前立腺癌の鑑別診断が必要である。

前立腺癌と前立腺肥大症は,発症年齢が重なることから,同一個人に同時に発生することがある。しかし,早期前立腺癌には特有の症状がなく,臨床症状から前立腺肥大症と鑑別することは困難である1)
本邦における,下部尿路症状を主訴に泌尿器科外来を受診した50〜79歳の504症例における前立腺癌の発見率の調査では,PSA検査と直腸診によるスクリーニング検査を行い,PSA値異常は21%,直腸診のみの異常は4%の症例で認め,PSA値あるいは直腸診異常症例の58%に前立腺生検を行った結果,4.4%で前立腺癌が発見されている2)
海外でも,臨床的に排尿症状を有して外来を受診した症例における前立腺癌発見率は6.7%と報告されている3)。したがって,何らかの排尿症状を訴えて外来受診した症例における前立腺癌発見率は,無症状例に対する前立腺癌検診における癌発見率に比べて高く,PSA値測定,直腸診による前立腺癌の鑑別診断が必要である。


 参考文献
1) 伊藤一人,山本 巧,大井 勝,他:前立腺集団検診受診者における国際前立腺症状スコアー(I-PSS)の傾向とQOL indexとの関係.泌尿器外科.2001;14:868-71.
2) 福多史昌,舛森直哉,田中吉則,他:下部尿路症状を主訴とする受診症例における前立腺癌発見率.臨床泌尿器科.2005;59:133-8.
3) Lepor H, Owens RS, Rogenes V, et al. Detection of prostate cancer in males with prostatism. Prostate. 1994;25:132-40.


 注)疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の3部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community-basedかhospital-basedかの2点を明記した。

 

 
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