(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
第1章 疫学

 
CQ4  ラテント癌が臨床癌に進展することはあるのか?

一部の癌が長い期間を経て臨床癌に進展するが,多くは臨床癌とならずに経過すると考えられている。

前立腺のラテント癌(定義は“剖検により発見される癌”であるが,何らかの原因で死亡し剖検を行った場合,若年齢層の前立腺からも認められることがわかっており,ここでは“現在の臨床的な診断手法では診断できないような小さい癌”をさす)が臨床癌に進展するまでの期間の解明はむずかしい。
若年者の剖検による検討で,微小なラテント癌は30歳代から認められると報告されている1)。ラテント癌から臨床癌へ進展する期間は11〜12年と推測している報告がある一方で2),発癌から癌死に至るまでの期間は45年以上と推測している報告がある3),4)。前立腺癌は比較的ゆっくり増殖するものが多いが,稀に数カ月のうちに急速に進行するものがあり,ラテント癌から臨床癌になるまでの期間は非常に幅が広い。
いずれにせよ,一般的にラテント癌の多くは臨床癌にならずに経過し,一部は緩徐な経過をたどって臨床癌に進展すると考えられている。


 参考文献
1) Sakr WA, Haas GP, Cassin BF, et al. The frequency of carcinoma and intraepithelial neoplasia of the prostate in young male patients. J Urol. 1993;150:379-85.
2) Etzioni R, Cha R, Feuer EJ, et al. Asymptomatic incidence and duration of prostate cancer. Am J Epidemiol. 1998;148:775-85.
3) 白石泰三,他:前立腺ラテント癌.前立腺癌診療マニュアル.前立腺研究財団,金原出版;1995.p13-24.
4) 渡辺 泱:前立腺癌の自然史.前立腺癌診療マニュアル.前立腺研究財団,金原出版,1995.p1-12.


 注)疫学に関する事項は推奨グレードをつけられない部分が多いため,他のパートと異なり各クリニカルクエスチョンに対して,コメントおよび解説,文献の3部からなる構成とした。また文献の評価は,それぞれが扱っている対象が日本人か外国人か,community-basedかhospital-basedかの2点を明記した。

 

 
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