(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

 
前立腺癌診療ガイドライン作成の経緯
および手順に関して


EBMに基づいた診療ガイドライン

EBM(evidence-based medicine)とは「個々の患者の医療判断の決定に,最新で最善の根拠を良心的かつ明確に,思慮深く利用すること」と定義されている。図1はEBMによる臨床意志決定における要因を表したものである。それぞれの患者には病態と環境,そして患者の価値観と行動という個別性がある。こうした状況において約束された最善の方法で集めてきた吟味された最新のエビデンスに基いて臨床医の専門的技能を適切に駆使できるように治療方針を決定することが,EBMによる臨床意志決定のあり方である。ただし診療ガイドラインは臨床意志決定を支援する際のツールであり,決定に際し拘束力を持つものではない。
EBMに則ったガイドラインでは,最初に臨床疑問の定式化(クリニカルクエスチョンの作成)を行う。作成されたクリニカルクエスチョンに対し,文献検索のためのキーワードを設定し,検索した文献に関して批判的吟味を加える。具体的にはある一定の方法論で構造化抄録を作成し,それを基にクリニカルクエスチョンに対するアンサーを作成する。これを実際にガイドラインとして適用し,その評価を得るという順序で作成される(表2)。
ここで強調しておきたいことは,日本における前立腺癌診療ガイドラインということである。つまり人種特性等を考慮すれば,本邦における治験を中心にエビデンスの集積が行われるのが望ましく,従って文献収集に当たっては極力本邦での文献を重視したが,エビデンスのレベルという観点から文献を選ぶと海外の文献が主体になってしまう。これは症例数,同意取得の問題から,本邦から発信された大規模なrandomized controlled trial(RCT)が少ないことが原因として考えられる。したがって,現段階では本ガイドラインは必ずしも本邦の事情を忠実に反映していないという可能性がある点に留意いただきたい。
また,別の問題点として,外科治療などの分野では RCT は施行しがたいことからエビデンスレベルの高い文献が集まりにくいことがある。これについてはエビデンスレベルの高低だけで推奨度を決定することの是非が昨今では国際的にも問題になっており,本ガイドラインでは推奨度の決定に関してはエビデンスレベルの高低を含め総合的に判断した。

図1 EBMによる臨床意思決定(Haynes, 2002)
図1 EBMによる臨床意思決定(Haynes, 2002)

表2 前立腺癌診療ガイドライン作成の手順
1. 原案の作成
2. Clinical questionおよびkey wordの設定     
3. 文献検索
4. 構造化抄録の作成
5. 原案の修正,加筆を行い初稿を作成
6. Peer review→revise
7. 本文および構造化抄録の完成
8. 患者用サマリーの作成
9. 外部評価
10. 公開

 

 
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