有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン
VI.考察 |
4.大腸がん検診の経済評価
抽出した文献について、死亡率減少効果と共に経済評価及び受診率対策もあわせて検討したが、今回の推奨を決める判断基準としては採用しなかった。これらは、がん検診実施の判断に伴う重要な要因とは考えられるが、その評価は死亡率減少効果が前提となる。しかし、がん検診の実施の判断の際には検討すべき条件であることから、今後、詳細について別途公表する予定である。
大腸がん検診に関する63文献のうち、経済評価論文として基本条件を満たしたのは英文2文献97,98)であった。このうち、検診方法について費用効果的な方法を検討したのは、英文2文献97,98)であった。両者はいずれも便潜血検査免疫法による検診を行っているが、精密検査の方法が異なっており、その費用効果を検討していた(表14)。最も費用効果的な方法が、便潜血検査免疫法による検診後、全大腸内視鏡検査で精密検査を行うことであることは両者とも一致しているが、その費用効果比は乖離している。その他の方法も、同様の傾向が見られた。両者は、共に支払い者立場で分析を行っているが、リードタイム・バイアスやレングス・バイアスへの対処は明確に示されていなかった。また、Shimboらの検討98)では、ポリープの診断、ポリペクトミーの過程も含んだモデルを形成しており、ポリペクトミーによる予防効果も評価されているが、Tsujiらの検討97)では初回治療のみの評価であることから、将来にわたる評価が不十分であった。今後、本ガイドラインにおいて推奨された新たながん検診方法を含め、がん検診評価モデルを再構築した上で、経済性に関する再検討が必要と考えられる。
表14 大腸がん検診の経済評価 | ||||||||||||||||||
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YOLS: year of life saved (救命生存年) |