有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン
VI.考察 |
2.他のガイドラインとの比較
諸外国におけるがん検診ガイドラインの各検診方法について、表13に示した9,10,12,94,95)。無作為化比較対照試験により死亡率減少効果が示されている便潜血検査化学法は、いずれのガイドラインの評価も高い。しかし、免疫法を評価対象と明示しているのは、米国のACSとAGAのガイドラインである。免疫法を評価対象としているガイドラインでは、有効性については便潜血検査の1手法として化学法と同等の評価を行い、また食事制限などの受診者の負担を軽減できることから、その実施には好意的な姿勢を示している。
S状結腸鏡検査は、USPSTF、CTFPHC(Canadian Task Force on Preventive Health Care)だけでなく、米国諸学会でも推奨されているが、フィンランドでは推奨していない。一方、便潜血検査化学法との併用法は、CTFPHCでは効果不明と判定している。S状結腸鏡検査を推奨している米国ACSのガイドラインでは、単独・併用法共に受診間隔を5年としている。一方、全大腸内視鏡検査は、主として米国における臨床ガイドラインで推奨されており、受診間隔は10年としている。
注腸X線検査については、米国では推奨、CTFPHCでは評価を保留、フィンランドでは推奨していない。直腸指診は、いずれのガイドラインでも推奨していなかった。
諸外国のガイドラインを比較すると、便潜血検査による検診の評価はほぼ一致しているものの、内視鏡検査による検診の評価は必ずしも一致していない。いずれも自国の医療制度下において、がん検診として行えるか否かにより、その判断が異なる。特に、集団を対象とする組織化された検診としての対策型検診Population-based Screeningには内視鏡検査はなじみにくく、米国やわが国の一部の医療機関で行う任意型検診Opportunistic Screeningにおいては、実施可能と考えられる。USPSTFでは、注腸X線検査を他の検診方法と同様に推奨Aとはしているが、あくまでも全大腸内視鏡検査の代替案としての位置づけであり、その根拠は他の検診方法に比べ、薄弱であった。わが国においても、検診や精密検査の方法として、全大腸内視鏡検査の代替として行われていることが多い。
表13 諸外国ガイドラインにおける大腸がん検診の推奨の比較 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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USPSTF; US Preventive Services Task Force ACS; American Cancer Society AGA; American Gastroenterological Association |
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AGA, ASGE (American Society of Gastrointestinal Endoscopy), ACP (American College of Physicians), ACG (American College of Gastroenterology),共同の臨床ガイドライン | |
CTFPHC; Canadian Task Force on Preventive Health Care FMS; Finnish Medical Society Duodecim |