有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン

 
VI.考察


1.有効性評価

便潜血検査(化学法・免疫法)による大腸がん検診は、欧米で行われた無作為化比較対照試験や症例対照研究と共に、わが国における症例対照研究でも、同様に大腸がんの死亡率減少効果を示している。これらの研究から共通して50歳以上に死亡率減少効果を認める。また、受診間隔については逐年検診および隔年検診(2年毎)の両者で死亡率減少効果が認められるが、隔年検診に比べ逐年検診でその効果はより大きい。免疫法は、感度が化学法より比較的高いことや、食事や薬剤制限などの受診者負担が軽減できるという特徴がある。このため、推奨レベルは同等だが、受診者の立場を考慮すると、化学法より免疫法を選択することが望ましい。ただし、現行の大腸がん検診では、すでに免疫法が主流を占めていることから、今回の結論は、現状に適合した科学的根拠を示したこととなる。
一方、S状結腸鏡検査、S状結腸鏡検査と便潜血検査化学法の併用法、全大腸内視鏡検査、注腸X線検査についても死亡率減少効果を認めた。ただし、S状結腸鏡検査では、到達範囲外の死亡率減少効果を認めていない。S状結腸鏡検査と便潜血検査化学法の併用法は増分効果が期待されるが、その大きさは明らかではない。また両者とも、S状結腸鏡検査に伴う偶発症の可能性は低いと考えられるが皆無ではなく、また便潜血検査に比べ、その可能性は高いことが推測される。全大腸内視鏡検査は間接的証拠しか示されていないが、感度が高いことやポリペクトミーの効果などから、死亡率減少効果が期待できる。注腸X線検査は、検診としてよりも精密検査として行われていると考えられる。また、全大腸内視鏡検査による検診を行う場合に、挿入不能例を想定して準備される場合がある。これらの検査を用いて検診を行う場合、安全性の観点から、前処置、検査、検査後の偶発症対策と共に、事前のインフォームド・コンセントは必須のものと考えられる。そうした対策を行う環境は、受診者個人を対象とした施設に限定される。人間ドックなど検診機関における大腸がん検診では内視鏡検査が普及しつつあるが、今回の結果を踏まえ、死亡率減少効果と、不利益について十分な説明を行った上で検診を実施することは、支障はない。

 

 
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