(旧版)尿路結石症診療ガイドライン 2013年版

 
3 再発予防
CQ 37
シュウ酸カルシウム結石の再発予防薬として保険収載されているマグネシウム製剤は本当に有効か?
推奨グレード
C1
シュウ酸カルシウム結石に対するマグネシウム製剤による再発予防に関して,有効なエビデンスがない。したがって,マグネシウム製剤による再発予防効果は議論のあるところである。
解説
2002 年版のガイドラインによれば,「マグネシウム製剤はシュウ酸カルシウム結石の発生予防として効能・効果に記載のある唯一の薬剤である。酸化マグネシウムは一般には緩下剤(通常用量1 日2 g)や制酸剤(通常用量1 日0.5〜1.0 g)として使用されており,シュウ酸カルシウム結石の発生予防として使用する際は用量を少なくして投与する必要がある」と記載されている1)
マグネシウムによる尿路結石形成抑制効果
マグネシウムはカルシウムと同じ2 価の陽イオンである。しかし,カルシウムが尿路結石形成における危険因子である一方,マグネシウムはクエン酸とともに抑制因子のひとつと考えられている。そして,マグネシウムによる結石形成抑制効果は,腸管内と尿中の2 か所で生じていると想定されている。すなわち,腸管内でマグネシウムはシュウ酸と結合し,腸管でのシュウ酸吸収を抑制することで尿中シュウ酸排泄を下げると考えられている2)。また,マグネシウムは尿中でカルシウムと競合し,比較的可溶性の高い複合体(シュウ酸マグネシウム)を形成することにより,不溶性のシュウ酸カルシウム形成を阻害する。さらに,マグネシウムは結石形成阻止物質のひとつであるクエン酸の腎尿細管からの吸収を阻害し,尿中クエン酸濃度を高める作用もあると報告されている3)。また,疫学調査でもマグネシウム摂取の重要性が確認されている。すなわち,尿路結石症の既往がない成人男性45,619 人における14 年間に及ぶ大規模な前向きコホート研究では,マグネシウム摂取量の低下が結石形成の危険を有意に高めるとしている4)
マグネシウムをめぐる議論
これらのことは尿路結石形成の抑制において,マグネシウム製剤の重要性を否定するものではない。しかし,24 時間尿中排泄量が75 mg 未満と定義される低マグネシウム尿は尿路結石症患者の5〜10%程度を占めるに過ぎず,低クエン酸尿あるいは高カルシウム尿に比して少ない5)。したがって,マグネシウムによる結石抑制効果は認められるものの,低マグネシウム尿患者が多くないこと,あるいはマグネシウム製剤による臨床的シュウ酸カルシウム結石形成防止効果について未だその見解が分かれていることから,今後RCT を含むさらなる研究が必要である。
参考文献
1) 日本泌尿器科学会,日本Endourology・ESWL 学会,日本尿路結石症学会編.尿路結石症診療ガ イドライン.金原出版.2002.
2) Taylor EN, Curhan GC. Oxalate intake and the risk for nephrolithiasis. J Am Soc Nephrol. 2007; 18:2198-204.
3) Lindberg J, Harvey J, Pak CY. Effect of magnesium citrate and magnesium oxide on the crystallization of calcium salts in urine:changes produced by food-magnesium interaction. J Urol. 1990;143:248-51.
4) Taylor EN, Stampfer MJ, Curhan GC. Dietary factors and the risk of incident kidney stones in men:new insights after 14 years of follow-up. J Am Soc Nephrol. 2004;15:3225-32.
5) Levy FL, Adams-Huet B, Pak CY. Ambulatory evaluation of nephrolithiasis:an update of a 1980 protocol. Am J Med. 1995;98:50-9.

 


 
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