尿路結石症診療ガイドライン 2013年版

 
3 再発予防
総論
尿路結石の治療はESWL の導入以降,劇的に変化した。さらに,内視鏡器機の進歩とレーザーなど破砕装置の発達に伴い,より低侵襲な処置での砕石が可能となってきた。しかし,砕石治療の進歩とともに再発予防が軽んじられてきていることは否定できない。また,尿路結石の再発を繰り返すことによる腎機能障害や,結石破砕術による合併症も無視できない。尿路結石とりわけカルシウム結石の5 年再発率は45%と非常に高い。このことより,尿路結石の成分分析に基づいた再発予防は砕石術以上に重要であると考えられる。
尿路結石は多因子疾患であり,さまざまな要因が重なり合って発症する。しかし,残念ながら尿路結石の成因はまだ完全には解明されてはいない。そのなかで,基礎研究の積み重ねから,尿路結石と動脈硬化の発症には極めて類似点が多く「尿路結石はメタボリックシンドロームの1 疾患である」という概念が提唱されるようになった。この考え方は,2005 年のTaylor ら1)の20 数万人対象の疫学調査でも立証され,以後,同様の報告が数多くみられるようになった。実際,結石関連物質の尿中排泄量と肥満度の関係をみると,結石形成の促進因子である高カルシウム尿症,高尿酸尿症,高シュウ酸尿症の割合は肥満度と相関すると報告されている。また,メタボリックシンドローム全体の予防法と尿路結石症の予防法はほぼ共通している。比較的若い人たちに多い尿路結石の発症はメタボリックシンドローム発症の警鐘とも捉えることができ,泌尿器科医と一般内科医が連携して尿路結石の再発予防に取り組むことが求められている。
尿路結石の再発予防の基本が①水分の多量摂取,②肥満の防止,③食生活の改善であることは本ガイドライン第1版でも強調されている。また,定期的通院が結石再発率を低下させる(stone clinic effects)ことも証明されている。これらに加えて,血液生化学検査,24 時間尿化学検査の異常の有無に応じた薬物療法も重要と考えられる。今回の改訂では薬物療法による再発予防について,より具体的なエビデンスを加えた。
1再発に対する診断
尿路結石患者の結石成分を知ることは,その後の治療計画を立てる上で,特に再発予防対策のために,最も重要である。
尿路結石の再発に対する診断において,家族歴,既往歴,現病歴はきわめて有用である。また,投与されている薬剤が,尿路結石の形成に深く関与することがあるため,服用期間を含めた問診は重要と考えられる。
2尿路結石再発予防における飲水指導の効果
水分摂取を促すことは尿量を増加させ,尿路結石の成分を問わず再発予防の基本とされている。飲水と尿路結石の再発との関連については,多くのエビデンスが得られている。
3シュウ酸摂取について
尿中に排泄されるシュウ酸のうち食事に由来するのは15%以下とされてきたが,時に50%以上になることもあるとの報告がHolmes ら2)によってなされて以後,高シュウ酸尿に対する食事療法の重要性が認識されてきている。
シュウ酸を多く含む食品として,葉菜類の野菜,タケノコ,紅茶,コーヒー,お茶(玉露・抹茶),バナナ,チョコレート,ココア,ピーナッツ,アーモンドなどがあげられる。しかし,摂取の方法を工夫することで吸収されるシュウ酸の量を大幅に減少させることが可能である。
カルシウムと一緒に摂ることでシュウ酸の吸収を減らすことができる8)。おひたしにすると絞り汁に含まれるシュウ酸の約半分が喪失する,などの報告があり,調理法の工夫も重要である。
4 プリン体の多く含まれる食品・飲料
高尿酸尿症は尿酸産生過剰によるものと,腎における尿酸排泄が亢進しているものがある。高尿酸尿症は尿酸結石の原因となるばかりでなく,カルシウム結石の一因ともなる。高尿酸尿症に対する食事指導ではプリン体を多く含む食品および飲料を認識しておくことが必要である。重要なのは,1 回の食事あたりの摂取プリン体の量である。また,飲料としてはアルコール飲料(特にビール)が最も重要である。
5 塩分摂取と結石再発
Borghi ら3)は2006 年に,食塩は尿細管におけるカルシウムの再吸収を抑制し,さらに食塩の過剰摂取が尿中クエン酸排泄量の減少をもきたす,と報告している。現時点ではエビデンスは少ないものの,塩分の過剰摂取はカルシウム結石の再発危険因子と考えられ,食事指導において適度な食塩摂取制限は有用であると思われる。
6 カルシウム摂取について
カルシウムに関しては,一定量(600〜800 mg/day)の摂取が必要とされている。過度のカルシウム制限は,腸管内でカルシウムと結合し糞便中に排泄されていたシュウ酸が腸管から過剰に吸収され,シュウ酸カルシウム結石形成の原因となる。
7 サイアザイド
サイアザイドは尿中のカルシウム排泄量を減少させることにより,カルシウム結石の再発を予防する。RCT の多くは有意な再発予防効果を証明しているが,予防効果が認められた報告はいずれも3 年以上の投与が必要なことを示唆している。
8 クエン酸製剤
クエン酸はシュウ酸カルシウム,リン酸カルシウムの結晶形成を抑制し,カルシウム結石患者では再発予防に有用である。 特に低クエン酸尿,遠位尿細管性アシドーシスの患者では有用性が高い。 また,クエン酸は尿中pH を上昇させ酸性尿を改善することから,尿酸結石,シスチン結石の再発予防にも有用である。
9 マグネシウム製剤
シュウ酸カルシウム結石の再発予防薬として保険収載されているのがマグネシウム製剤である。マグネシウムはカルシウムと同様に腸管内でシュウ酸と結合し,その吸収を妨げ,さらに尿中でより可溶性のシュウ酸マグネシウムを形成することで尿路結石の形成を抑制する。しかし,残念ながら,マグネシウム製剤の再発予防効果を証明するRCT はほとんどない。
10 尿酸生成抑制薬
アロプリノールの尿酸結石に対する再発予防効果については,『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』第2 版で詳しく解説されている4)
高尿酸血症を有していても,必ずしも尿路結石の頻度は増加しないが,高尿酸尿を有すると尿路結石の頻度が増加する傾向にある。高尿酸血症や痛風に合併する尿路結石は,尿酸結石だけではなく,尿路結石で最も頻度が高いシュウ酸カルシウム結石もある。尿路結石を合併する高尿酸血症の治療薬は,アロプリノールが第1 選択である。高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石の再発防止には,アロプリノールや尿アルカリ化薬が有効である。
11 新たな再発予防薬の可能性
尿路結石は動脈硬化と発生機序が類似しており,動脈硬化には魚油に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)の予防効果が知られている。カルシウム含有結石患者にEPA を投与すると尿中シュウ酸やカルシウム排泄量が減少することが報告された。EPAは高脂血症を伴った尿路結石の再発予防に有望な薬剤の一つである。
骨粗鬆症は尿路結石のリスクファクターと考えられている。実験的に骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネートがシュウ酸カルシウム結晶の成長を抑制した。骨粗鬆症,長期臥床,高カルシウム血症を伴う尿路結石ではビスフォスフォネートの予防効果にも期待が持てる。
尿路結石は生活習慣病のひとつであり,薬剤による尿路結石の再発予防はあくまで生活指導および食事療法の補助として用いられることを認識しなければならない。いずれの薬剤も長期投与が基本であり,副作用にも十分注意が必要である。
参考文献
1) Taylor EN, Stampfer MJ, Curhan GC. Obesity, weight gain, and the risk of kidney stones. JAMA. 2005;293:455-62.
2) Holmes RP, Goodman HO, Assimos DG. Contribution of dietary oxalate to urinary oxalate excretion. Kidney Int. 2001;59:270-6.
3) Borghi L, Meschi T, Maggiore U, et al. Dietary therapy in idiopathic nephrolithiasis. Nutr Rev. 2006;64:301-12.
4) 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン作成委員会編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2 版. 日本痛風・核酸代謝学会. 2010.

 


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