尿路結石症診療ガイドライン 2013年版
2 診断・治療
CQ 23
PNLトラクト作成の要点は何か?
PNLトラクト作成の要点は何か?
推奨グレード B |
トラクトを置く位置,トラクトの本数は,患者ごとによく検討して決めるべきことであ る。術前の画像検査は極めて重要である。手術開始時に逆行性造影をまず行い,尿路の 形状を把握することは重要である。 |
解説
PNL は1980 年代に大きな腎結石の治療法として開発された。標準的な方法は24〜30 Fr のトラクトを用いる。最近は18 Fr 以下のトラクトを用いたmini-PNL も行われるようになってきたが,その呼称はまだ標準的ではなく,メリットもまだ議論されているところである1,2)。
体位や穿刺位置の決定には,術前のCT 画像による周囲臓器の把握が重要である。特に左側の場合,腸管の走行位置には注意を要する。
Nettoらによるサンゴ状結石に対する適切なトラクト造設に関する後ろ向きの比較研究では,119 例(上腎杯:16 例,中・下腎杯:70 例,複数腎杯穿刺:33 例)を検討しているが,stone-free rate は,上腎杯穿刺が87.5%と高く,次いで,複数のトラクトを置いた例が84.8%と高かった。一方,下腎杯や中腎杯の単独穿刺では80%であった。また,複数のトラクトを立てた場合,39.4%に輸血を要した(中・下腎杯穿刺では14.3%)10)。Singla は,164 腎(完全サンゴ状結石:43 例,部分サンゴ状結石:85 例,巨大結石:36 例)に,複数トラクトによるPNL を行い,98 腎では上腎杯穿刺も行い,通常3 トラクト作成したと報告している。そのうち,輸血は46 例に要し,仮性動脈瘤を4 例,敗血症を8 例,胸水貯留を7 例,血気胸1 例を認めている。結石除去率は1 回目のセッションで70.7%,2 回目のセッションで89%であったと報告している。結石除去率は良好であるが,合併症にはやはり注意を要するものと思われる11)。
2005 年のAUA のガイドラインでも,複数のトラクトを置くほうが大きな結石では望ましいとされている12)。最近は,上腎杯を穿刺することや,軟性鏡を用いることで,複数トラクトを置かなくとも良好な成績を上げることができるという報告もなされている。Yadav らは849 腎にPNL を行い,そのうち332 腎は上腎杯よりアプローチし,術後に11 例に胸水を認め,うち7 例に胸腔トロカールを挿入したが,他は安全に施行しえたことを報告している13)。Munver らは240 腎にPNL を行い,そのうち98 例に上腎杯穿刺を行い,合併症率は16.3%であったと報告している14)。
最近では,軟性尿管鏡を併用することで,PNL のトラクト数を減らし,安全に行うことができるとの報告もある15,16)。
PNL は1980 年代に大きな腎結石の治療法として開発された。標準的な方法は24〜30 Fr のトラクトを用いる。最近は18 Fr 以下のトラクトを用いたmini-PNL も行われるようになってきたが,その呼称はまだ標準的ではなく,メリットもまだ議論されているところである1,2)。
PNL の体位
従来のPNL は腹臥位で行われるが,仰臥位(患側の上半身を少し上げた半側臥位も含む)で行うことも可能である。仰臥位のメリットは,経尿道的操作を追加できる,手術時間が短い,麻酔管理が安全といった点があげられる。一方,穿刺できる範囲が狭い,腎が可動しやすい,腎に至るまでの距離が長い,腹臥位に比べ拡張が難しい,といったデメリットもある3,4)。
体位や穿刺位置の決定には,術前のCT 画像による周囲臓器の把握が重要である。特に左側の場合,腸管の走行位置には注意を要する。
穿刺方法
Clinical Research Office of the Endourological Society(CROES)database を用いた5,806 例のPNL の穿刺法の比較研究では,超音波ガイド下で行われたものは453 例(13.7%)に過ぎず,2,853 例(86.7%)は透視ガイド下に行われていたが,超音波ガイド下のほうが術後の出血が少なく,輸血を要する率が明らかに低いことを報告している。また,トラクトのサイズが27 Fr を超えると出血が増すことも報告している5)。超音波を併用し,確実に腎杯を狙って穿刺することで,より安全となるものと考える。通常,尿管を閉塞し水腎を作り,穿刺前に逆行性に造影し腎盂腎杯の形状を把握することは,安全な穿刺のために重要である5〜9)。
トラクトの位置,本数
結石の位置や大きさにより,また硬性鏡か軟性鏡のどちらを用いるかにより,適切なトラクトの位置も変化する。また1 本のトラクトが良いのか,複数のトラクトを設けるべきなのかも悩ましい問題である。トラクトが多ければ砕石は容易となるが,穿刺時の出血や臓器損傷などのリスクも増加する。
Nettoらによるサンゴ状結石に対する適切なトラクト造設に関する後ろ向きの比較研究では,119 例(上腎杯:16 例,中・下腎杯:70 例,複数腎杯穿刺:33 例)を検討しているが,stone-free rate は,上腎杯穿刺が87.5%と高く,次いで,複数のトラクトを置いた例が84.8%と高かった。一方,下腎杯や中腎杯の単独穿刺では80%であった。また,複数のトラクトを立てた場合,39.4%に輸血を要した(中・下腎杯穿刺では14.3%)10)。Singla は,164 腎(完全サンゴ状結石:43 例,部分サンゴ状結石:85 例,巨大結石:36 例)に,複数トラクトによるPNL を行い,98 腎では上腎杯穿刺も行い,通常3 トラクト作成したと報告している。そのうち,輸血は46 例に要し,仮性動脈瘤を4 例,敗血症を8 例,胸水貯留を7 例,血気胸1 例を認めている。結石除去率は1 回目のセッションで70.7%,2 回目のセッションで89%であったと報告している。結石除去率は良好であるが,合併症にはやはり注意を要するものと思われる11)。
2005 年のAUA のガイドラインでも,複数のトラクトを置くほうが大きな結石では望ましいとされている12)。最近は,上腎杯を穿刺することや,軟性鏡を用いることで,複数トラクトを置かなくとも良好な成績を上げることができるという報告もなされている。Yadav らは849 腎にPNL を行い,そのうち332 腎は上腎杯よりアプローチし,術後に11 例に胸水を認め,うち7 例に胸腔トロカールを挿入したが,他は安全に施行しえたことを報告している13)。Munver らは240 腎にPNL を行い,そのうち98 例に上腎杯穿刺を行い,合併症率は16.3%であったと報告している14)。
最近では,軟性尿管鏡を併用することで,PNL のトラクト数を減らし,安全に行うことができるとの報告もある15,16)。
トラクトの拡張方法
ダイレーターで少しずつ広げていく方法,バルーンで拡張する方法があるが,安全性,有効性ともにどちらも大きな差はないとされている17)。
参考文献 |
1) | Mishhra S, Sharma R, Garg C, et al. Prospective comparative study of miniperc and standard PNL for treatment of 1 to 2 cm size renal stone. BJU Int. 2011;108:896-9. |
2) | Knoll T, Wezel F, Michel MS, et al. Do patients benefit from miniaturized tubeless percutaneous nephrolithotomy? A comparative prospective study. J Endourol. 2010;24:1075-9. |
3) | Wu P, Wang L, Wang K. Supine versus prone position in percutaneous nephrolithotomy for kidney calculi:a meta-analysis. Int Urol Nephrol. 2011;43:67-77. |
4) | Liu L, Zheng S, Xu Y, et al. Systematic review and meta-analysis of percutaneous nephrolithotomy for patients in the supine versus prone position. J Endourol. 2010;24:1941-6. |
5) | Aodonian S, Scoffone CM, Louie MK, et al. Does imaging modality used for percutaneous renal access make a difference? A matched case analysis. J Endourol. 2013;27:24-8. |
6) | Türk C, Knoll T, Petrik A, et al. Guidelines on urolithiasis. European Association of Urology. 2013. |
7) | EL Nahas AR, Shokeir AA, El Assmy AM, et al. Colonic perforation during percutaneous nephrolithotomy: study of risk factors. Urology. 2006;67:937-41. |
8) | Osman M, Wendt Nordahl G, Heger K, et al. Percutaneous nephrolithotomy with ultrasonography guided renal access:experience from over 300 cases. BJU Int. 2005;96:875-8. |
9) | Jessen JP, Honeck P, Knoll T, et al. Percutaneous nephrolithotomy under combined sonographic/ radiologic guided puncture:results of a learning curve using the modified Clavien grading system. World J Urol. 2013. Epub ahead of print. |
10) | Netto NR Jr, Ikonomidis J, Ikari O, et al. Comparative study of percutaneous access for stag- horn calculi. Urology. 2005;65:659-62. |
11) | Singla M, Srivastava A, Kapoor R, et al. Aggressive Approach to Staghorn Calculi-Safety and Efficacy of Multiple Tracts Percutaneous Nephrolithotomy. Urology. 2008;71:1039-42. |
12) | Preminger GM, Assimos DG, Lingeman JE. AUA guideline on management of staghorn calculi: diagnosis and treatment recommendations. J Urol. 2005;173:1991-2000. |
13) | Yadav R, Aroon R, Gupta N, et al. Safety of supracostal punctures for percutaneous renal surgery. Int J Urol. 2006;13(10):1267-70. |
14) | Munver R, Delvecchio FC, Newman GE, et al. Critical analysis of supracostal access for percutaneous renal surgery. J Urol. 2001;166:1242. |
15) | Undre S, Olsen S, Mustafa N, et al“. Pass the ball!” Simultaneous flexible nephroscopy and retrograde intrarenal surgery for large residual upper-pole staghorn stone. J Endourol. 2004;18: 844-7. |
16) | Grasso M, Lang G, Taylor FC. Flexible ureteroscopically assisted percutaneous renal access. BJU Int. 2005;96:1097-100. |
17) | Wezel F, Mamoulakis C, Rioja J, et al. Two contemporary series of percutaneous tract dilation for percutaneous nephrolithotomy. J Endourol. 2009;23:1655-61. |