尿路結石症診療ガイドライン 2013年版

 
1 疫学
CQ 04
尿路結石症の発生に地域差や人種差はあるか?
上部尿路結石の罹患率・有病率には地域差,人種差がみられるが,世界的に増加傾向にあり,食習慣の変化や地球温暖化の影響が示唆されている。
解説
調査の時期や方法の多様性から,世界各国における尿路結石の発生頻度を比較することは容易ではない。上部尿路結石の有病率は,先進国で高く6〜18% とされているが,最も高いのはサウジアラビアの20% である1)。アメリカでは1964〜1972 年の2.62% から増加の一途をたどり,2007〜2010 年には8.8% と約3 倍に達している2,3)。しかしながら,ミネソタ州ロチェスターでは1990 年から2000 年にかけて罹患率がやや減少に転じたとの報告もある4)。一方,アジアやアフリカなどの発展途上国では上部尿路結石は比較的少ないとされてきたが,近年ではトルコ(14.8%),台湾(9.8%),ブラジル(5%),インド(4%)などでも社会経済の発展とともに,上部尿路結石の有病率は増加傾向にある1)。人種差については,白人,ヒスパニック系,黒人,アジア系の順に多いとされている1)
年齢階級別罹患率をみると,日本では男性が40 歳代,女性が50 歳代にピークがあるのに対し,アメリカやイランでは男女とも40 歳代にピークがある。男女比はイランの1.15 対1 から日本の2.5対1 までの範囲で男性に多いが,欧米では20〜30 歳代など女性の方がわずかに多い年齢層もみられる1)。興味深いことに,アメリカでは男女比は縮小傾向にあるという報告が増えている5〜7)
世界的な上部尿路結石の増加傾向の主な原因は食習慣の変化であり,動物性タンパク質,塩分,果糖の摂取量増加が指摘されている。近年,肥満は結石形成のリスクファクターであることが明らかになっているが,ファストフード中心の食事や果糖摂取量の増加による肥満の蔓延も,結石の増加に寄与していると考えられる1)。また,肥満の増加や肥満による結石形成リスクの増加は女性のほうが顕著であり,これが男女比の縮小傾向につながっていると考えられる5)
一方,気温の高い地域に結石の発生が多いことや,高温環境への曝露により2〜3 か月後に結石の症状をきたすことが報告されている。このことから,地球温暖化も上部尿路結石の増加の一因と考えられ1),今後もこの増加傾向は続くと予想されている8)
参考文献
1) Trinchieri A. Epidemiological trends in urolithiasis:impact on our health care systems. Urol Res. 2006 ;34:151-6.
2) Romero V, Akpinar H, Assimos DG. Kidney stones:a global picture of prevalence, incidence, and associated risk factors. Rev Urol. 2010;12:e86-e96.
3) Scales Jr CD, Smith AC, Hanley JM, et al. Prevalence of kidney stones in the United States. Eur Urol. 2012;62:160-5.
4) Lieske JC, Pena de la Vega LS, Slezak JM, et al. Renal stone epidemiology in Rochester, Minnesota: an update. Kidney Int. 2006;69:760-4.
5) Scales CD Jr, Curtis LH, Norris RD, et al. Changing gender prevalence of stone disease. J Urol. 2007;177:979-2.
6) Strope SA, Wolf JS Jr, Hollenbeck BK. Changes in gender distribution of urinary stone disease. Urology. 2010;75:543-6.
7) Penniston KL, McLaren ID, Greenlee RT, et al. Urolithiasis in a rural Wisconsin population from 1992-2008:narrowing of the male-to-female ratio. J Urol. 2010;185:1731-6.
8) Brikowski TH, Lotan Y, Pearle MS. Climate-related increase in the prevalence of urolithiasis in the United States. Proc Natl Acad Sci USA. 2008;105:9841-6.

 


 

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