(旧版)尿路結石症診療ガイドライン改訂版

 
再発予防ガイドライン


第2章 再発に対する指導と薬物療法

1. 基本的な項目

(2) 食事指導

b. 食生活からみた食事指導

    1) 朝昼夕3食のバランスをとる:朝食欠食、夕食過食を是正する。
  2) 夕食から就寝までの間隔をあける:4時間程度の間隔を目標とする。

解説

1) 栄養素摂取量について

■蛋白質
尿路結石発生に関して、動物性蛋白質の過剰摂取が指摘されている15)。動物性蛋白質は尿中カルシウム、蓚酸、尿酸排泄を増加させ、尿中クエン酸排泄を減少させる。したがってその過剰摂取は、尿酸結石形成を促進させるばかりか16)、カルシウム含有結石の発生も助長する17)。日本人の成人蛋白質所要量は1.01g/kg/日であり18)、動物性/植物性蛋白質の比率は1が理想であるため、蛋白質の食事指導にはこれらの数値を目標とする。

■カルシウム
古くから、カルシウム摂取制限により、カルシウム結石形成の危険度は低下すると考えられてきた。しかし過度のカルシウム制限は、本来、腸管内でカルシウムと結合し糞便中に排泄されていた蓚酸が、腸管から過剰に吸収されることを招く19,20)。その結果、尿中蓚酸排泄の増加をきたし21,22)、蓚酸カルシウム結石形成の危険度は増す22,23)と考えられている。大規模なprospective研究によっても、適度なカルシウム摂取は尿路結石症の発生頻度を減少させると報告されている24)。日本人のカルシウム摂取量は1日所要量の600mgには未だ達しておらず、結石患者のカルシウム摂取量はさらに少ない傾向にある25,26)。以上の観点から、我が国の結石患者に対する至適カルシウム摂取量は600〜800mg/日程度ではないかと推察される。

■蓚酸
尿中蓚酸は、わずかな増加でカルシウム結石の結晶形成を増加させるため、カルシウムよりもはるかに重要な結石形成促進物質である20,27)。尿に排泄される蓚酸のうち、食事由来のものは10〜15%であるが28,29)、日本人が好んで食べるホウレンソウ、タケノコ、チョコレート、紅茶などには蓚酸が豊富に含まれているため、過剰摂取は控えたほうがよい30)。また蓚酸摂取時にカルシウムを同時に摂取すると、腸管からの蓚酸吸収を抑制することから、ホウレンソウの“おひたし”には“ちりめんじゃこ”を添える、チョコレートを食べるならミルクチョコレートを、紅茶を飲むならミルクティーを飲むというような工夫も一考である。

■塩分
ナトリウムの過剰摂取により、尿中ナトリウム排泄が増加するばかりか尿中カルシウム排泄も増加し10,31,32)、尿酸ナトリウム塩が産生されやすくなる33)。尿酸ナトリウム結晶はカルシウムの結晶化の核として働くため34)、結石再発の危険因子となる。したがって、結石患者、特に高カルシウム尿や低クエン酸尿を呈する患者には、ナトリウム摂取制限が必要である。我が国では、高血圧を予防するための食塩摂取量の目標値が10g/日未満(0.15g/kg未満)であることから、結石再発予防のための食塩摂取量の指導も同様に10g/日を目安として考えてよいと思われる。

■炭水化物
炭水化物(主に穀物)にはマグネシウムや食物繊維が多量に含まれている。結石患者のマグネシウム摂取量は少なく、穀物と野菜の摂取不足が原因の一つと考えられている24)。マグネシウムは、古くから結石形成を阻止する因子の一つとして考えられており、in vitro において蓚酸カルシウム結晶の発育を阻止する働きが確認されている35)。またマグネシウムは、腸管内で蓚酸と結合して蓚酸の吸収を妨げる36)一方、尿中でも蓚酸と結合し可溶性の蓚酸マグネシウムを形成することで、結果として蓚酸カルシウム結石形成の抑制につながるのではないかとも考えられている37)。酸化マグネシウムやクエン酸マグネシウムの経口投与により、尿中マグネシウムやクエン酸排泄は増加する38)。食物繊維(ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体)は、それに含まれるフィチン酸が腸管内でカルシウムと結合してカルシウムの吸収を抑制すること39)、食物の消化管内停滞時間を短縮するために栄養素の吸収を抑制することから、結石発生防止に有用である。結石患者と健常者の炭水化物摂取量には差はみられないが40)、穀物を主たるエネルギー源とする食生活は結石形成の予防に有用であると考えられる。一方、砂糖(refined carbohydrate)の過剰摂取は尿中カルシウム排泄を増加させるため、特に高カルシウム尿を示す患者には、砂糖摂取量を控えさせることが重要である41,42,43)

■脂肪
過剰な脂肪摂取は、さまざまな生活習慣病を引き起こすことが知られている。結石患者の脂肪摂取量は多く25,40,44)、脂肪の過剰摂取は結石形成の危険因子の一つと考えられている44,45)。結石発生予防のための脂肪摂取量の報告はないが、「第六次改定日本人の栄養所要量」で推奨される脂肪エネルギー比は20〜25%で、また動物性:植物性:魚介類からの脂肪の比率の目安は5:4:1 であることから46)、これらを目安に指導すればよいと考えられる。

■クエン酸
クエン酸は尿中においてカルシウムイオンとキレート結合し、可溶性錯塩を形成することで、尿中イオン化カルシウム濃度を低下させ、蓚酸カルシウムやリン酸カルシウムの相対的飽和度を減少させることから結石形成の阻止物質となる47,48)。結石患者の尿中クエン酸排泄量は低下しており49,50,51)、クエン酸カリウムの経口投与により、尿pHの上昇とともに尿中クエン酸排泄量は増加し、結石の再発率は低下する52,53)。特に尿のアルカリ化は尿酸結石、シスチン結石の再発予防や溶解に有用である。クエン酸は果物や野菜に多く含まれているが、過剰摂取により同時に蓚酸を多量に摂取する可能性がある54)。以上から、食物からクエン酸を多く摂取しようと考えるより、動物性蛋白質や砂糖の過剰摂取を控え、体液のsubclinical acidosis状態49)を是正することで、尿中クエン酸排泄を増加させるほうが食事指導上、理にかなっていると考えられる。

2) 食生活からみた食事指導

我が国の結石患者の緑黄色野菜摂取量は、不足傾向にあると考えられている24)。野菜は穀類と同様にマグネシウムや食物繊維を多く含んでいる。食生活のバランスの面からも、動物性蛋白質の多量摂取に対する警鐘もあり55)、適度な野菜の摂取が勧められる。
一方、我が国の結石患者の食生活の多くは、一日必要栄養素の半分近くを夕食で摂取する夕食中心型であり、特に夕食における動物性蛋白質摂取量が多い56)。夕食中心の食生活は、特に就寝後の尿中への結石形成促進物質の過剰排泄につながる56)。また夕食後の尿環境に影響を及ぼす他の因子として、夕食から就寝までの時間(夕食〜就寝間隔)がある。食後の尿中結石関連物質の排泄は、約2〜4時間後でピークに達し、その後漸減してゆく30)。したがって、尿路結石予防の観点からは、夕食〜就寝間隔は4時間程度が適当と思われる。
 
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