(旧版)尿路結石症診療ガイドライン改訂版

 
総論

2. 尿路結石症の疫学

尿路結石症の有病率や年間罹患率を調べる疫学的方法として、退院患者や医療保険のデータを利用したsurvey、無作為抽出した地域住民を調べるpopulation-based surveyなどがある。我が国においては、京都大学泌尿器科が中心となって、泌尿器科を擁する全国の主要医療施設を対象としたhospital surveyを過去5回実施してきた。これにより、半世紀以上にわたる我が国の尿路結石症の変遷を検討することが可能となった21,22)
部位別では1965年頃から上部尿路結石が95%以上を占めており(図6)、性別でも1965年頃から男女比はほぼ2.5:1に固定している(図7)。年間罹患率は年間の患者発生総数を日本人口で除したものであり、1965年以降の調査において算出した。一般に原因不明とされる上部尿路結石については初発結石のみを、下部尿路閉塞や尿路感染など明らかな原因を有する下部尿路結石については初発および再発結石の両方を含めて算出した。表1に1965年以降10年毎の年間罹患率(人口10万対)の推移を示した。上部尿路結石症の年間罹患率は、男性では64(1965年)から118(1995年)へと84%増加し、女性では24から46へと90%増加したが、下部尿路結石症に関しては著明な変動は認められなかった。生涯罹患率(=年間罹患率×平均寿命)で言い換えると男性では4.3%(1965年)から9.0%(1995年)、女性では1.8%から3.8%へと増加した。つまり、1995年には男性11人に1人、女性26人に1人が一生の間に一度は尿路結石症に罹患する計算となる。


図6 全尿路結石に占める上部尿路結石比率の年次推移
図6 全尿路結石に占める上部尿路結石比率の年次推移


図7 男女比の年次推移
図7 男女比の年次推移


性別年齢別年間罹患率の年次推移(図8)を見ると、上部尿路結石症は、男性では1965年は20〜40歳代にピークがあったが、1995年には30〜60歳代にかけての幅広いピークに移行してきており、女性でも20歳代のピークが50〜60歳代に移行してきている。また、上部尿路結石症は20歳以降に急激に増加する疾患であることがわかる。一方、下部尿路結石症は男女とも主に60歳代以上に発生し、過去30年間ほとんど変化していない。好発年齢を考慮すると、20〜60歳代における上部尿路結石症の年間罹患率(人口10万対)は1965年69から1995年109に増加し、60歳代以上における下部尿路結石症の年間罹患率(人口10万対)は18から14に減少した計算になる(表1)。


図8 年齢別年間罹患率の年次推移
Aは男性の上部尿路結石症、Bは女性の上部尿路結石症、Cは男性の下部尿路結石症、Dは女性の下部尿路結石症を示す。
図8 年齢別年間罹患率の年次推移


表1 上部および下部尿路結石症の年間罹患率(人口10万対)の年次推移
  1965 1975 1985 1995
上部尿路結石症 63.8 (102.0) 75.7 (112.4) 91.6 (131.7) 117.5 (158.1)
24.3 (37.5) 31.7 (45.2) 40.8 (56.5) 46.1 (59.9)
43.7 (68.9) 53.4 (78.1) 65.7 (93.5) 80.9 (108.6)
下部尿路結石症 8.5 (37.2) 7.3 (40.3)  7.3 (32.7) 9.8 (27.0)
1.1 (2.4) 1.3 (3.5) 1.2 (3.8) 2.2 (4.8)
4.7 (18.2) 4.2 (17.2) 4.2 (15.9) 5.9 (14.4)
上部尿路結石症は初発結石のみ、下部尿路結石症は初発と再発結石を含めた数値である。
カッコ内の数値は、上部尿路結石症は20〜60 歳代、下部尿路結石症は60 歳代以上での年間罹患率である。


また見方を変えると、図8のデータは全人口でのbirth cohortにおける年間罹患率の追跡調査になっている。例えば1936〜1945年生まれの男性birth cohort(図9、(5))の年間罹患率は、20歳代(1965年)105、30歳代(1975年)120、40歳代(1985年)149、50歳代(1995年)180であったことがわかる(図9)。このように、全国レベルで30年という長期間にわたってcohortの年間罹患率を追跡し得たデータは国際的にもきわめて貴重である。各birth cohortの罹患率の年次推移を比較すると、若い世代ほど罹患率が高くなってきていることがわかる。すなわち、我が国の上部尿路結石症罹患率の増加傾向は近い将来も続くであろうと予測される。


図9 各birth cohort における上部尿路結石症年間罹患率の年次推移
Aは男性、Bは女性を示す。
図9 各birth cohort における上部尿路結石症年間罹患率の年次推移


結石成分に関しては、(1)1965〜1977年、(2)1978〜1987年、(3)1995年の3つの期間に区切ったデータを比較することができる(表2)23)。上部尿路結石は、カルシウム結石が最も多く男性では84〜86%を占めているが、女性では71%、75%、83%と経時的に増加している。また、男女ともに尿酸結石は増加し感染結石は減少している。これらカルシウム結石の増加と感染結石の減少は世界中の先進国に共通に見られる現象である。下部尿路結石は、上部尿路結石に比べてカルシウム結石が少なく尿酸結石、感染結石が多いのが特徴である。男性ではカルシウム結石と尿酸結石の増加、感染結石の減少が認められ、上部尿路結石成分の推移と共通していたことから、腎結石が膀胱まで下降してから発見された下部尿路結石がかなりあると思われる。女性ではカルシウム結石と感染結石が二大成分である。


表2 結石分析
  成分
1965〜1977年 1978〜1987年 1995年 1965〜1977 年 1978〜1987年 1995年
(1)上部尿路結石 CaOx/CaP 83.7 84.5 86.1†¶ 71.3 75.0*† 82.5†¶
   CaOx 35.1 37.9 47.4 17.9 23.4 31.7
   CaP 4.2 2.9 1.5 9.1 7.7 5.4
   CaOx+CaP 44.4 43.7 37.2 44.3 43.9 45.4
感染結石 7.5 5.2*† 2.7†¶ 23.3 18.3*† 10.5†¶
尿酸 4.6 5.7* 5.6 1.4 1.4 2.7†¶
シスチン 1.6 1.0 1.4 1.1 1.1 1.9
その他 2.6 3.6 4.2 2.9 4.2 2.4
  (n=9,041) (n=46,441) (n=2,344) (n=4,085) (n=17,441) (n=775)
(2)下部尿路結石 CaOx/CaP 50.7* 55.0* 58.8 42.7 41.7 42.9
   CaOx 10.4 14.3 15.5 8.0 9.0 0.0
   CaP 9.6 7.9 6.5 11.7 9.2 22.9
   CaOx+CaP 30.7 32.8 36.8 23.0 23.5 20.0
感染結石 26.2 20.4* 14.2 39.8 44.8 54.3
尿酸 11.3 13.9*† 20.0†¶ 2.1 2.9 0.0
シスチン 1.4 0.7 0.7 1.7 0.7 0.0
その他 10.4 10.0 6.2 13.7 9.9 2.8
  (n=1,243) (n=5,119) (n=155) (n=239) (n=948) (n=35)
数字は%で表示
* † ¶ は統計学的に有意差あり (p < 0.05)。
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