(旧版)科学的根拠(Evidence Based Medicine;EBM)に基づいた腰痛診療のガイドラインの策定に関する研究
第12章 『若年者の腰痛』
II.発症要因
1) | 坐位時間・バックパックの重量・持ち運ぶ時間・スポーツをする時間と相関あり。(12~18歳の生徒1269人) |
2) | 心身症的な症状と強い相関あり。(12~18歳、11276人) |
3) | 女性・BMI 25㎏/㎡以上・男性の競技スポーツ・毎日の喫煙・運動不足・余暇の重労働・ヘルスシステムの増加・QOLの低下と有意に相関あり。(13~16歳、1389人) |
4) | 64%が少なくとも片親に腰痛歴あり。一日2時間以上ビデオゲームをしている子に腰痛が多かった。(9歳、392人) |
5) | 女性(odds ratio:2.7, 95%CI 1.2-6.1)、スクールバッグの重量が体重の20%以上(odds ratio:3.1, 95%CI 1.0-9.2)が相関あり。また、椅子の端に腰掛けている生徒が通院歴と相関あり(odds ratio:3.1, 95%CI 1.0-9.5)。(平均14歳の生徒123人) |
6) | 椎間板変性のある15歳の生徒が23歳まで腰痛を持続する相対危険率は16(95%CI 2.2-118)であった。15歳におけるdisc protrusionとScheuermann様変化が腰痛の持続に関与。 |
7) | 10代では腰痛とレントゲン変化との間に関連なし。Physical activityが腰痛の危険性を低下させる。(14歳の生徒、640人) |
8) | physical activity・背筋力の増加が腰痛歴と有意に相関。4年間の背筋力の変化の割合が過去1年間の腰痛発生と相関。(10~19歳、96人) |
9) | 男子のみスポーツとの間に相関あり。腰痛の強さと腰椎の可動性の間には関連なし。 |
10) | 腰痛群の方が腰椎椎間板変性の発生が有意に増加。調査開始時の椎間板変性およびdisc protrusionの存在から将来の腰痛頻度の増加を有意に予測可能。(14歳の生徒、1503人) |
11) | 腰椎レントゲン変化と成人での腰痛の頻度との間に相関なし。成長期での腰痛と頻回の腰背部疾患の発生が成人での腰痛の危険因子。両者が揃えば88%腰痛が発生する可能性あり。(14歳の生徒、640人) |
12) | 親の腰痛治療歴(adjusted odds ratio 2.10; p < 0.001), 競技スポーツ(adjusted odds ratio 1.73; p=0.003), テレビ鑑賞時間(adjusted odds ratio 1.23; p=0.05)、13歳以上(adjusted odds ratio 1.82; p < 0.001)、女子(adjusted odds ratio 1.89; p < 0.001)が危険因子であった。(8~16歳の1755人) |
13) | 体幹の非対称性(Odds ratio:1.19, 95%CI 1.00-1.39)、座高(Odds ratio:1.24、95%CI 1.03-1.46)が腰痛発生と関連。男子では身長のOdds ratioが1.40(95%CI 1.13-1.65)、座高のOdds ratioが1.35(95%CI 1.09-1.63)。(平均11.8歳、859人) |
14) | disk protrusionのある子供では、腰椎の前屈制限あり(p=0.043)。physical activityと早期の椎間板変性との間に相関はない。(15歳の1503人) |
15) | physical activityの少ない子は脊柱可動性の減少、腹筋・背筋力の低下を認め腰痛発生が多かった(p=0.006)。(15歳の1503人) |
16) | 非特異的腰痛は体幹筋力・スポーツ活動と相関なし。(10~16歳、117人) |
17) | 腰痛群で腰椎の伸展とSLRが減少。腹筋・背筋の持久力も低下。(15歳の1503人) |
18) | disk protrusionのみが腰痛と相関あり。(15歳の1503人) |
19) | 腰痛群で椎間板変性の頻度が高かった(p=0.01)。follow-upでのdisk protrusionの発生頻度は腰痛の有無で差がなかった。(15歳の1503人) |
20) | 特発性の腰痛群で座高が高かった。"pelvic height"と"suprapelvic height"が大きかった。(12~19歳、610人) |
21) | L4/5椎間での椎間板変性は腰痛群に多かった、椎間板後方突出と腰痛との関連が示唆された。腰痛群で多椎間変性を示す傾向があった。(14~25歳の33例) |
22) | ステロイド療法が骨塩量を低下させ腰痛発症の原因となる。(10~15歳の女子8人) |
1) | Grimmer K:Appl Ergon, Aug; 31(4): 343-60, 2000 |
2) | Vikat A:Scand J Public Health, Sep; 28(3): 164-73, 2000 |
3) | Harreby-M:Eur-Spine-J. 8(6): 444-50, 1999 |
4) | Gunzburg-R:Eur-Spine-J. 8(6): 439-43, 1999 |
5) | Viry-P:Rev-Rhum-Engl-Ed, Jul-Sep;66(7-9):381-8, 1999 |
6) | Salminen-JJ:Spine, Jul 1;24(13):1316-21, 1999 |
7) | Harreby-M:Eur-Spine-J, 6 (3), 181-6, 1997 |
8) | Newcomer-K:Acta-Paediatr, Dec, 85(12): 1433-9, 1996 |
9) | Burton-AK:Spine. Oct 15; 21(20): 2323-8, 1996 |
10) | Salminen-JJ:Spine. Oct 1; 20 (19): 2101-7, 1995 |
11) | Harreby-M:Spine. Nov 1; 20(21): 2298-302, 1995 |
12) | Balague-F:J-Spinal-Disord. Oct; 7(5): 374-9, 1994 |
13) | Nissinen-M:Spine. Jun 15; 19(12): 1367-70, 1994 |
14) | Salminen-JJ:J-Spinal-Disord. Oct; 6(5): 386-91, 1993 |
15) | Salminen-JJ:Int-J-Sports-Med. Oct; 14(7): 406-10, 1993 |
16) | Balague-F:Spine. Jul; 18(9): 1199-205, 1993 |
17) | Salminen-JJ:Spine. Apr; 17(4): 405-11, 1992 |
18) | Tertti-MO:Radiology. Aug; 180(2): 503-7, 1991 |
19) | Erkintalo-MO:Radiology. Aug; 196(2): 529-33, 1995 |
20) | Ebrall-PS:J-Manipulative-Physiol-Ther. Jun; 17(5): 296-301, 1994 |
21) | 原田博文:整形外科と災害外科、39巻2号、436-440、1990 |
22) | 吉川朝昭:整形外科と災害外科、45巻3号、673-677、1996 |
(発症要因のまとめ):
腰痛発症と正の相関がある因子:
坐位時間・バックパックの重量・持ち運ぶ時間・スポーツをする時間・心身症・女性・BMI 25㎏/㎡ 以上・男性の競技スポーツ・毎日の喫煙・運動不足・余暇の重労働・ヘルスシステムの増加・QOLの低下・親の腰痛歴・1日2時間以上のビデオゲーム・椎間板変性・disc protrusion・Scheuermann病・physical activity・背筋力の増加・テレビ鑑賞時間・体幹の非対称性・座高・男子での身長・脊柱可動性の減少・腹筋・背筋力の低下・"pelvic height" と "suprapelvic height"・ステロイド療法
腰痛発症と負の相関がある因子:
physical activity(これを正の相関としているものもある)
相関のない因子:
腰椎のレントゲン変化・腰椎の可動性・体幹筋力・スポーツ活動(正の相関としているものもある)