(旧版)科学的根拠(Evidence Based Medicine;EBM)に基づいた腰痛診療のガイドラインの策定に関する研究
第4章 腰痛の薬物療法に関するエビデンス
考察
Mauritsは二重盲検試験の方法論について以下の項目を挙げている。 母集団が均質であること、年齢、性別、体格などの基本的特徴が比較可能であること、適切なランダム化が行われていること、drop-outの数が記載されていること、最小母集団の対象者数が50人以上であること、治療法が標準化され明確に記載されていること、対照となる治療群が選定されていること、併用療法は行わないこと、適切なplacebo治療との比較が行われていることなどである。 また、治療効果判定に際しては患者に知らせないこと、適切な効果判定法を用いること、効果判定はblindで行うこと、6カ月以上の十分な経過観察期間をとることである。 データの表示と解析には、治療遂行状況の解析、とくにdrop-outの理由、各治療グループでの主要な治療効果の頻度、薬物試験では服薬遵守率と満足度の記載を挙げている。
今回の研究の結果、我が国において現在使用されている腰痛症の治療薬は大多数が二重盲検試験による客観的評価がなされたものであり、Mauritsの基準に照らしても、その使用は妥当なものと考えられた。 しかしながら、対照薬とされたものはインドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウムなどさまざまであり、個々の薬剤間の比較は困難であった。 また、対象となった腰痛患者については外来あるいは入院患者で腰痛を訴えたものとされており、それぞれの研究を相互に比較することは困難であった。Visual Analogue Scaleなどによる患者自身による疼痛の評価、Roland and Morris Disability Scale などによる能力障害の評価、SF-36などによる一般的健康状態の評価など多角的な視点からの評価が必要と思われ、腰痛疾患評価法の統一も重要と考えられた。
最後に薬剤の有効性、副作用に関しては個々の患者で反応が異なる可能性があり、すでに臨床使用されている薬剤についても継続的な評価が必要と考えられた。