(旧版)科学的根拠(Evidence Based Medicine;EBM)に基づいた腰痛診療のガイドラインの策定に関する研究

 
第2章 腰痛の画像診断


MRI検査
腰痛の画像診断における近年のめざましい進歩はMRIに依存しているといっても過言ではない。 MRIは単純X線に比べより多くの解剖学的情報を得ることができ28)、また、腰椎の姿勢による椎間板高や髄核の位置の変化などを知ることができ有用であるが16,53)(グレードC)、腰椎椎間板ヘルニアや椎間板変性像などが高頻度に認められfalse positiveに留意する必要がある7,21,29,48)(グレードB)。 MRIは椎間板ヘルニアの有無、椎間板変性の有無を知るためのスクリーニング検査として有用である。
腰椎椎間板変性はMRI T2強調画像で容易に検査可能であるが、Gd-DTPA造影MRIを行うと変性の程度や、外傷の程度、栄養状態などを非侵襲的に検査可能である36)(グレードC)。 椎間板変性像が若年者、とくに成長期の直後に認められる椎間板変性は成人早期まで腰痛を繰り返すリスクや腰痛との関連を指摘されている17,38,40,41,50)(グレードA)。 一方、成人例では腰痛の局在と椎間板変性とは相関しない32)(グレードC)。
MRI画像で腰椎椎間板ヘルニアを認めても腰痛や機能障害に関与しているかどうかは明らかにできないが25)、extrusion typeの腰椎椎間板ヘルニアや神経根の高度の圧迫は下肢痛と関連がある5)(グレードC)。
術後遺残腰痛の原因を鑑別することを目的としてMRIで硬膜周囲瘢痕を評価したり51)、椎体の脂肪変性や炎症所見を評価することがある9)(グレードC)。硬膜周囲瘢痕の拡がりは術後遺残腰痛や下肢痛の再発と関連がないのに対して51)、後側方固定術後の固定隣接椎体の脂肪変性や炎症所見は術後遺残腰痛と関連がある9)(グレードC)。
MRI T2強調画像においてHigh intensity zone(HIZ)の存在は椎間板の変性と腰痛の存在を強く疑わせる所見であるが3,31,39,47)(グレードB)、腰痛の原因となる椎間板の破綻を必ずしも示すものではない11)(グレードC)。腰痛がない無症状の人でも、MRIでHIZを認める場合には椎間板造影による疼痛誘発テストで腰痛が誘発される11)(グレードC)。
腰痛の出現を予測する因子をMRIなどの画像所見に求める研究があるが43,44)、臨床所見や形態学的所見に影響を受けず精神的・心理的要素により影響される44)(グレードC)。

 

 
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