(旧版)科学的根拠(Evidence Based Medicine;EBM)に基づいた腰痛診療のガイドラインの策定に関する研究

 
第1章 急性腰痛の診療


研究1:欧米のガイドラインからみた急性腰痛の診療
科学的事実の順位付け
アメリカのガイドラインでは、科学的事実の順位付けを4段階に分類している。 すなわち、A:強力な事実に即した根拠(多数の質の高い科学的研究)、B:中等度の事実に即した根拠(一つの質の高い科学的研究または多数の妥当な科学的研究)、C:限られた事実に即した根拠(腰痛患者を対象とした複数の妥当な科学的研究)、D:事実に即した研究としては委員会が基準をみたさないと判断した研究)である。 ガイドライン作成委員会は、この順位付けを厳密に行い、その結果、Aと判定された科学的事実は一つも存在しなかった。
イギリスのガイドラインでは、3つ星システムで評価されている。 すなわち、★★★複数の許容できる科学的研究の大半において全般的に一貫している事実、★★一つの許容できる科学的研究による根拠、または複数の許容できる科学的研究で、限られた根拠しかない事実、★許容できる科学的研究の基準をみたさない事実、である。 科学的根拠は、治療法に関しては全て無作為化比較試験(RCT)で判断され、腰痛の評価と自然経過は前向きコホート研究に由来している。
腰痛の治療に関する許容できる研究の条件は、無作為化試験、急性または再発性腰痛、プライマリーケアに関連、各群の症例数は10例以上、患者側から治療評価が行われていることである。 腰痛の評価と自然経過に関する許容できる科学的研究の条件は、前向きコーホート研究、急性または再発性腰痛、プライマリーケアに関連、症例数100例以上、追跡調査1年以上である。
科学的根拠の位置付けは常に変化しうる。 現時点で科学的根拠が低いと判断されている事実でも、数年後には質の高い科学的研究により科学的根拠が証明される可能性があり、その逆もあり得る。 また、例えば、従来行われている診断法や治療法が一つの新しい質の高い科学的研究により否定されたからといって、その妥当性が全て否定されたわけではない。

 

 
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