(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

 
 
第XIII章 特殊な胆道炎


3. 無石胆嚢炎
Q117. 無石胆嚢炎の診断法は?

無石胆嚢炎でも急性胆嚢炎の診断に腹部エコー,CTが有用であるが,有石胆嚢炎に比し診断率が低く,注意が必要である。

急性無石胆嚢炎は手術後・外傷・熱傷など重症疾患の治療中に発症しやすく,急性胆嚢炎の2〜15%を占めている(「第III章/2./Q7.急性無石胆嚢炎の頻度は?」参照)。 診断は難しく本邦における術後胆嚢炎の発症時における正診率は63%に過ぎない(レベル4)52)
多くの例が合併疾患によるICU管理下(気管挿管管理下)に置かれており,有石急性胆嚢炎では特異度の高い臨床兆候(sonographic Murphy signなど)も役立たないことが多い。 胆嚢シンチグラフィーは,sensitivityは高いものの合併疾患(中心静脈栄養,絶食状態,肝不全)によって偽陽性が多くなるためspecificityが低くなる。 腹部エコー,CTでは(1)壁肥厚像,(2)胆嚢周囲の浸出液,(3)漿膜下浮腫,などが診断に役立つとされるがシンチグラフィー同様specificityは有石胆嚢炎に比して低い(レベル4〜5)53,54)。 このため重症疾患の治療中に生じた原因不明の感染症に対しては無石胆嚢炎の可能性を念頭におく必要がある。他に感染のfocusがなく無石胆嚢炎を否定できない場合には細菌学的検索と治療を兼ねて経皮的胆嚢ドレナージを行う。 ただし,ほとんどの例で抗菌薬が既に投与されており,胆汁培養の陽性率(33%)は高くない(レベル4)54,55)

表4 無石急性胆嚢炎の画像診断能(文献54,55)より引用)
報告者 超音波検査 腹部CT 胆道シンチグラフィー
  Sensitivity Specificity   sensitivity  Sensitivity false p.
 Blankenberg  23%(3/13)        
 Savoca  28%(5/18)        
 Swayne  58%(7/12)      91%  
 Mirvis  92%(13/14) 96% 86%(6/7)  97%(18/19)  54%(13/24)
 Kang  36〜89%      83〜100%  
 症例数の記載がないものは原文に症例数の明記がないもの


 

 
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