(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第XIII章 特殊な胆道炎
3. 無石胆嚢炎
Q115. 急性無石胆嚢炎の頻度と予後は?
・急性無石胆嚢炎は急性胆嚢炎の2〜15%を占める。
・無石胆嚢炎の一般的な危険因子は,手術・重症外傷・熱傷・経静脈栄養などである。
また悪性腫瘍の肝門部転移・肝動注療法・糖尿病・特定の薬剤・特殊な感染症なども,無石胆嚢炎と関連するといわれる。わが国の急性無石胆嚢炎の報告は腹部手術後に多い。
・無石胆嚢炎の一般的な危険因子は,手術・重症外傷・熱傷・経静脈栄養などである。
また悪性腫瘍の肝門部転移・肝動注療法・糖尿病・特定の薬剤・特殊な感染症なども,無石胆嚢炎と関連するといわれる。わが国の急性無石胆嚢炎の報告は腹部手術後に多い。
急性無石胆嚢炎は急性胆嚢炎の2〜15%を占める(レベル4)1,2,3,4)。 無石胆嚢炎は重症患者に発生しやすく,壊疽性胆嚢炎や胆嚢穿孔の併発率が高いため一般的に予後は不良である。 Kalliafaらの急性無石胆嚢炎27例における検討では,壊疽性変化は63%にみられ,穿孔が15%,膿瘍が4%に発生し,全体的な死亡率は41%である(レベル4)5)。 一方,Ryuらの急性無石胆嚢炎156例の検討では,壊疽性変化は55%にみられ,5.1%に穿孔が発生しているが,死亡例はない(レベル4)6)。 Kangらの594例の症例集積における検討では,全体的な死亡率は15%(91例が死亡)であり,外傷後に発症した場合では死亡率は27%である(レベル4)7)。 表1に無石胆嚢炎の危険因子を示す。
本邦で無石胆嚢炎のみを対象とした研究はほとんどない。 Idaらが日本の145の医療機関の調査結果によると,1979年から81年の2年間に対象施設にて良性胆道疾患手術を受けた患者14,654人のうち無石胆嚢炎は463例(3%),無石胆管炎は93例(0.6%)である(レベル4)8)。
表1 急性無石胆嚢炎に関連する可能性のある因子
危険因子 | |
手術 | |
心臓手術24,16,17,18) | |
心臓移植20,21,22,23) | |
大動脈瘤手術11,12,13) | |
外傷 | |
熱傷 | |
糖尿病32,33,34) | |
腹部血管炎14,30) | |
悪性腫瘍の肝門部転移27) | |
うっ血性心不全,出血性ショックによる低血圧,心停止後31) | |
医原性 | |
インターロイキン-2療法,リンフォカイン活性キラー細胞療法34) | |
経皮経肝胆道ドレナージ術41) | |
骨髄移植術後35) | |
他部位の感染からの波及 | |
カンジダ全身感染36) | |
レプトスピラ症37) | |
結核 | |
胆管のサルモネラ感染38,39) | |
AIDS42,43) | |
その他のまれな原因による肝外胆管の閉塞 | |
血性胆汁 | |
エキノコッカス嚢胞 |