(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第XII章 急性胆嚢炎 -手術法の選択とタイミング-
Q100. 手術術式は,腹腔鏡下胆嚢摘出術か開腹下胆嚢摘出術か?
治療にあたる術者の得意な術式を選択する。(推奨度A)
できれば腹腔鏡下胆嚢摘出術が望ましい。 (推奨度B)
できれば腹腔鏡下胆嚢摘出術が望ましい。 (推奨度B)
急性胆嚢炎の治療として胆嚢摘出術が広く行われている。 以前は,開腹下胆嚢摘出術が標準術式であったが,最近10年間では急性胆嚢炎に対しても腹腔鏡手術が積極的に導入されている。 腹腔鏡下胆嚢摘出術は,急性または慢性胆嚢炎症例において開腹下胆嚢摘出術より安全性やコストの面で優れていることが知られている(レベル2b)1)。その導入初期においては,急性胆嚢炎に対して腹腔鏡下手術は適応外とする意見があった。 しかし,開腹下胆嚢摘出術と腹腔鏡下胆嚢摘出術の比較では,ともに死亡例はなく,合併症発生率と術後入院日数については腹腔鏡下胆嚢摘出術が有意に優れている結果であった(レベル1b)2,3)。 このように,手術可能な急性胆嚢炎症例については,腹腔鏡下胆嚢摘出術による治療は従来の開復下胆嚢摘出術と同等の治療効果と低侵襲性を有する術式として推奨されている。 以上のことを総合すると現時点では,急性胆嚢炎の外科治療にあたっては,腹腔鏡下胆嚢摘出術が望ましいが,術者の得意な術式を選択することが最も重要である。
腹腔鏡下胆嚢摘出術は,従来の開腹術とは異なる術式であり,内視鏡外科手術に適した術者教育が必要である。 日本内視鏡外科学会は,『内視鏡下外科手術施行にあたってのガイドライン』4) を公開している。 このガイドラインに沿った術者教育は重要であり,急性胆嚢炎例の術者は熟練した術者(日本内視鏡外科学会の技術認定医レベル)が行うことが望ましい。 また,腹腔鏡下胆嚢摘出術に伴う合併症(後述Q102)を熟知し,重篤な合併症となることがある胆管損傷(レベル2b)5) の予防に配慮する。 腹腔鏡下胆嚢摘出術の遂行が困難と判断した場合には躊躇せず開腹術に切り替え,合併症の発生を防止する。