(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第VIII章 急性胆管炎に対する各種ドレナージ手技
3. 内視鏡的胆道ドレナージ術の手技の実際
2)EST
(3)内視鏡的胆道ドレナージにおけるESTの意義
急性胆管炎においてEST付加を必要としない理由として,1)ドレナージにESTを付加してもその効果に差がない,2)EST付加により出血などの合併症がみられること,などが症例集積研究で指摘されている(表2)8,9)。 急性胆管炎はEST後出血のリスクファクターの一つであり6),coagulopathyを合併する重症例ではEST付加を避けるべきである。 一方,ESTの利点は,1)総胆管結石症(重症胆管炎を合併していない例)においてはドレナージだけでなく一期的切石が可能であること,2)選択的カニュレーションが困難な例でもprecuttingにより胆管へのドレナージルートを確保することが可能になることである。
急性胆管炎に対する内視鏡的ドレナージではESTを必ずしも必要としない。 しかし,乳頭部嵌頓結石ではprecuttingがドレナージ遂行に必須となることがあるなどESTを付加すべき状況は患者の状態,術者の熟練度により異なる。 そこで,本ガイドラインではESTの付加について以下のように注意を促すものとした。
表2 内視鏡的ドレナージにおけるESTの必要性について
報告者 | 方法 | 症例数 | 成功率 | 有効率 | 合併症 |
(報告年) | |||||
Sugiyama8) | without EST | 93 | 96% | 94% | 2% |
(1998) | with EST | 73 | 95% | 92% | 11% |
Hui 9) | without EST | 37 | 86% | 100% | 3% |
(2003) | with EST | 37 | 89% | 100% | 11% |