(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第VI章 急性胆管炎 -基本的治療-
2. 細菌学的検索と抗菌薬
Q 54. 抗菌薬治療についての臨床試験の結果は?
胆管炎に対する抗菌薬治療についての無作為化比較対照試験(RCT)の結果を表4にまとめた(レベル2b)34,35,36,37,38,57)。 1980年代に欧米で胆管炎に対する標準的治療として確立されたABPC+GM(レベル4〜5)58,59) と比較して,新たに開発された抗菌薬が同等の効果を有しており有用性が高い,という結果を導いているものが多い。
なお,これらのエビデンスを現在の日本の臨床医療の参考にする場合,以下の点を十分に考慮する。
(1)胆管炎の抗菌薬治療は個体や施設,国,時代により起炎菌・感受性の状況が異なること,(2)現在本邦で多用されている第三,四世代セフェムについてのRCTは乏しいこと,(3)新しい抗菌薬が次々と開発されるため,過去のRCTのエビデンスとの十分な比較や取捨選択が必要となる。
表4 胆管炎における抗菌薬の臨床比較試験
報告者(年) | 疾患名 | 投与抗菌薬 | 臨床的治癒 | 有意差 |
Muller(1987)35) | 胆管炎 | ABPC+TOB | 85%(17/20) | |
PIPC | 60%(9/15) | ns | ||
CPZ | 56%(10/18) | p<0.05 | ||
Gerecht(1989)34) | 胆管炎 | Mezocillin | 83%(20/24) | p<0.01 |
ABPC+GM | 41%(9/22) | |||
Thompson(1990)36) | 胆管炎 | PIPC | 70% | ns |
ABPC+TOB | 69% | |||
Chacon(1990)57) | 胆嚢炎+胆管炎 | pefloxacin | 98%(49/50) | ns |
ABPC+GM | 95.7%(45/47) | |||
Thompson(1993)37) | 胆嚢炎+胆管炎 | CPM | 97.5%(78/80) | ns |
Mezlocillin+GM | 100%(40/40) | |||
Sung(1995)38) | 胆管炎 | CPFX | 85%(39/46) | ns |
CAZ+ABPC+MN | 77%(34/44) |