(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第V章 急性胆管炎 -診断基準と重症度判定-
5. 鑑別診断
Q40. 急性胆管炎の診断時に鑑別を要する疾患は?
急性胆管炎の鑑別疾患には上部消化管疾患,急性肝炎,急性膵炎や急性胆嚢炎などの消化器疾患があげられる。さらに,胸部疾患や泌尿器疾患など他領域の疾患も念頭に置く必要がある。
急性胆管炎の鑑別疾患としては,特に上部消化管疾患,急性胆嚢炎や急性膵炎などの上腹部痛をきたすことが多い疾患,急性肝炎などの肝胆道系酵素の上昇をきたす疾患があげられる。 さらに消化器疾患に限らず胸部疾患や泌尿器疾患など他領域の疾患もあげられている(表8)(レベル4)26,66,67)。 なお,急性胆嚢炎や急性膵炎などは急性胆管炎を合併している可能性がある。
急性胆管炎と最も鑑別が難しい疾患は急性胆嚢炎である。臨床徴候では両者とも,発熱,腹痛,黄疸が認められるが,急性胆嚢炎に伴う腹痛のほうが,腹膜刺激と関連してより強固であることが多い。 急性胆嚢炎では血液検査上,白血球数の上昇は認められるが,急性胆管炎や胆管結石などの合併を除けば,肝・胆道系酵素(ALP,γ-GTP,AST,ALT)の上昇は軽度である。 (急性胆嚢炎におけるビリルビン,肝・胆道系酵素,アミラーゼの測定の意義は「第IX章/Q70.急性胆嚢炎の診療におけるアミラーゼの血中値測定の意義は?」参照)一般に臨床徴候や血液検査だけでは,急性胆嚢炎と急性胆管炎の鑑別が困難な場合が多く,胆道系の画像検査が鑑別診断に有用であると報告されている(レベル4)26)。
敗血症による胆汁鬱滞との鑑別には,腹痛がないことや胆道系以外に明らかな重症感染症の原因となる病巣を見出すことが大切である(レベル4)26)。 また,肝移植術後では急性胆管炎と拒絶反応の鑑別が難しい。
Hanau26) | Sinanan66) | Afdhal67) |
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