(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

 
 
第V章 急性胆管炎 -診断基準と重症度判定-


3. 血液検査
血清アミラーゼ
Q29. 急性胆管炎の診療における血清アミラーゼ値度測定の意義は?

急性膵炎の合併に注意する必要があり,血清アミラーゼ値の測定は有用である。

血清アミラーゼ値は約1/3の症例で上昇する(レベル4)35)。 血清アミラーゼ値の上昇は膵障害を意味し,胆管炎の原因が胆道結石であることを示唆する。 さらに,急性胆管炎に胆石性急性膵炎が併発しているかの鑑別が大切であり,その診断に血清アミラーゼ値の測定は意義がある。

腫瘍マーカー
腫瘍マーカーであるCA19-9,およびCA125の血中濃度も急性胆管炎で上昇することがある(レベル4)36,37)。 原因疾患の良悪性の鑑別には胆道ドレナージなどによる胆管炎の治療後の値が参考になり,良性疾患では,通常,すみやかに正常値となる。

サイトカイン,エンドトキシン
急性胆管炎では,他の炎症病態と同様に炎症性サイトカインが産生され,TNF,可溶性TNFレセプター,IL-6,IL-8,IL-10,IL-1raの血中濃度が高値を呈する(レベル4)38,39)。 その他,LPS結合蛋白,可溶性CD14も高値を呈することがある(レベル4)38)。 胆汁中にもサイトカイン(IL-6,TNFα)やエンドトキシンが分泌され(レベル4)39),急性胆管炎では胆汁中のサイトカイン(IL-6,TNFα)濃度が非急性胆管炎例に比して有意に高値を呈する(レベル4)40)
重症胆管炎ではエンドトキシン血症や補体価の低下をきたすことも多いが(レベル4)22,41),エンドトキシン値の高値は,疾患の重症度や予後とは必ずしも相関しない(レベル4)42)。 また,重症胆管炎では,軽症の胆管炎に比べ有意に血中サイトカイン(IL-6,IL-1ra)濃度が高いことから(レベル4)39),その病態にはサイトカインによる炎症反応の関与が示唆されている。
血漿フィブロネクチン値の低下43),末梢血単核球のNF-κB活性の上昇44),血中ビリルビン値の低下速度(減黄率b値)の不良45) は,胆管炎の予後不良を意味する。

胆汁酸
閉塞性黄疸を呈して胆道ドレナージを受けた症例のうち,胆管炎を合併していた症例では,非胆管炎合併群よりも胆汁中の胆汁酸濃度,およびC/CDC ratio(コール酸とケノデオキシコール酸の比)は低値である(レベル4)46)。 また,総胆管結石症においても,急性胆管炎合併例では非合併例に比して,血中のグリシン抱合ケノデオキシコール酸濃度が上昇し,胆汁中のグリシン抱合コール酸とグリシン抱合ウルソデオキシコール酸の濃度が低下している(レベル4)47)。 肝障害に伴うグリシン抱合型一次胆汁酸の排泄障害,および肝ウルソデオキシコール酸合成の抑制が示唆されている。

 

 
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