(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第III章 定義・病態と疫学
3. 予後
2)急性胆嚢炎
Q17. 急性胆嚢炎に対して保存的治療が施行された場合の再発率は?
大半の急性胆嚢炎は胆嚢摘出術によって治療されるので,急性胆嚢炎の再発というアウトカムを想定することは難しい。 臨床的に問題となり得るのは,第一に,何の治療も施行することなく自然に治癒した急性胆嚢炎が再発する場合,第二に,絶食や抗菌薬などの保存的治療の後に胆嚢摘出術を待機している期間に急性胆嚢炎が再発する場合,第三に,手術リスクや患者の選択などの何らかの理由により胆嚢摘出術が施行されなかった後に急性胆嚢炎が再発する場合(胆嚢ドレナージ術が施行される場合と施行されない場合),第四に,胆嚢摘出術が施行された後に胆管炎を発症する場合,などがある。
自然に治癒する急性胆嚢炎の頻度に関する資料は見あたらない。 保存的治療ののちに胆嚢摘出術を待機している期間の急性胆嚢炎の再発率は,2.5%〜22%である(レベル2b)87,88)。 急性有石胆嚢炎(n=311)では,急性期に胆嚢摘出術を受けなかった39例のうち25例は一度退院した後に待機的な手術が予定されたが,そのうちの1例(2.5%)が待機中に急性胆嚢炎を再発している(レベル2b)87)。 また,重症例以外では,8〜10週の手術待機期間内に22%が急性胆嚢炎を再発し,うち6%に胆嚢穿孔を認めている(レベル2b)88)。
胆嚢摘出術非施行例の長期的な再発率についても,同様に報告が乏しいが,半年〜数年間の観察期間内に10%〜50%の再発率が報告されている。 保存的治療と胆嚢摘出術を比較した無作為化比較対照試験(RCT)によれば,重症例を除いた急性胆嚢炎患者(n=56)のうち,11%に急性胆嚢炎の既往があり,さらに保存的治療に割り付けられた33例のうち8例(24%)が1.5〜4年間の観察期間中に胆嚢摘出術を受けている(レベル2b)89)。 一方で,急性胆嚢炎81例のうち非手術9例(11%)を3〜28ヶ月間にわたり経過を観察しても,急性90)胆嚢炎の再発を認めていない(レベル4)。また,経皮的ドレナージによる治療の後に胆嚢摘出術を施行することなく経過観察された急性胆嚢炎症例では,平均18ヶ月の観察期間中に,60例中28例(47%)に急性胆嚢炎が一回以上再発し(レベル4)91),平均37ヶ月観察された他の36例の報告では,11例(31%)に急性胆嚢炎の再発がみられている(レベル4)92)。 また急性胆嚢炎で入院した585例のうち胆嚢外瘻術のみを施行された114例の報告では,6ヶ月〜14年間経過観察された23例中5例(22%)が急性胆嚢炎を再発したが14例は無症状のまま経過している(レベル4)93)。