(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第III章 定義・病態と疫学
2. 成因,発生頻度
Q9. AIDSと急性胆道炎の関連は?
AIDS発症患者では胆汁うっ滞(AIDS cholangiopathy),急性無石胆嚢炎などに注意する。
AIDS患者の3分の2に肝腫大や肝機能異常が見られ,その一部が胆道系疾患を発症する。AIDS患者における胆道疾患は,2つの機序で起こる。 より頻度が高いのは硬化性胆管炎と同様の胆汁うっ滞(AIDS cholangiopathy)であり,頻度が比較的低いのは急性無石胆嚢炎である。
AIDS cholangiopathyはAIDS発症後1年以上経過した中年男性にみられ(平均罹患期間15±2.2ヶ月,平均年齢37歳,範囲21〜59歳),患者の90%は右上腹部痛を訴え,腹部画像検査で肝内/肝外胆管の拡張がみられる。 また,81%の患者に腹部超音波検査で異常が,78%の患者にCT検査で異常が,また生化学検査では,著明なアルカリフォスファターゼの上昇が認められる(レベル4)55)。
AIDS患者における無石胆嚢炎の特徴は,(1)非AIDS患者と比較して若年,(2)通常経口摂取が可能,(3)右上腹部痛を呈する,(4)著明なアルカリフォスファターゼの上昇と軽度の血清ビリルビン値の上昇がみられる,(5)サイトメガロウィルス感染あるいはクリプトスポリジウム感染を伴うこと,等である(レベル4)55)。 AIDS患者の腹部手術に関するレビューによると,AIDS患者の開腹手術のうち急性胆嚢炎が原因である場合が最も多い56)。