(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第III章 定義・病態と疫学
1. 定義および病態
2)急性胆嚢炎
(4)特殊な急性胆嚢炎
無石胆嚢炎(acalculous cholecystitis)
胆嚢結石を伴わない急性胆嚢炎。
黄色肉芽腫性胆嚢炎(Xanthogranulomatous cholecystitis)
黄色肉芽腫性の胆嚢壁肥厚を特徴とする胆嚢炎12)。 結石の嵌屯によって胆嚢内圧が上昇し,Rokitansky-Aschoff洞が穿破することで胆嚢壁内に胆汁が漏出・侵入し,これを組織球が貪食して泡沫状の組織球よりなる肉芽腫が形成される13)。 初期に急性胆嚢炎の症状を訴えることが多い。
気腫性胆嚢炎(emphysematous cholecystitis)(「第IX章/写真3 気腫性胆嚢炎症例1(重症胆嚢炎)/写真4 気腫性胆嚢炎症例2(重症胆嚢炎)」参照)
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)などのガス産生菌の感染によって胆嚢壁内にガス像が出現するもの。 壊疽性胆嚢炎に発展すると穿孔して敗血症に移行しやすい。糖尿病に合併しやすい。
胆嚢捻転症(gallbladder torsion)(「第IX章/写真1 胆嚢捻転症症例1(重症胆嚢炎)/写真2 胆嚢捻転症症例2(重症胆嚢炎)」参照)
胆嚢が捻転し急性胆嚢炎を起こす病態。 胆嚢・胆嚢管の肝付着部位が間膜のみでの固定で,可動性に富む遊走胆嚢を先天的因子として,これに後天的因子(内臓下垂,老人性亀背,脊椎側弯,るいそう,など)と,物理的誘因(腹腔内圧の急激な変化,急激な体位変換,前屈位による振り子様運動,胆嚢近傍臓器の蠕動亢進,排便,腹部打撲などの胆嚢に捻れを来す因子)が重なり発症するとされている14)。