(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第III章 定義・病態と疫学
1. 定義および病態
2)急性胆嚢炎
(2)急性胆嚢炎の病理学的・病態学的分類
浮腫性胆嚢炎(edematous cholecystitis);1期(2〜4日)
毛細血管・リンパ管のうっ滞・拡張を主体とする胆嚢炎で,胆嚢壁はうっ血,浮腫性となる。 組織学的には,胆嚢組織は温存されていて,漿膜下層に細小血管の拡張と著しい浮腫がみられる10,11)。
壊疽性胆嚢炎(necrotizing cholecystitis);2期(3〜5日)(「第IX章/症例:壊疽性胆嚢炎」写真5参照)
浮腫性変化の後に組織の壊死出血が起こった胆嚢炎。 内圧の上昇により胆嚢壁を圧迫するようになると,その結果動脈分枝の血行が停止(組織学的には細小動脈の血栓形成,閉塞)して,組織の壊死が発生する。 組織学的には,各層の所々に斑紋状の壊死巣がみられるが,全層性や広範な壊死巣は少ない10,11)。
化膿性胆嚢炎(suppurative cholecystitis);3期(7〜10日)(「第IX章/写真6 化膿性胆嚢炎症例(重症胆嚢炎)」参照)
壊死組織に白血球が浸潤し化膿が始まった胆嚢炎。 この病期ではすでに炎症の修復は盛んで,拡張していた胆嚢は収縮傾向を呈し,炎症に伴う繊維性増生のため壁は再度肥厚性となる。 壁内膿瘍は比較的大きく,壁深在性のものは胆嚢周囲膿瘍となる10,11)。
慢性胆嚢炎
胆嚢炎の穏やかな発作の繰り返しで起こり,粘膜の萎縮,胆嚢壁の線維化を特徴とする。 胆石の慢性的刺激により発生すると考えられる。 急性胆嚢炎をしばしば生じることがある。