(旧版)高血圧治療ガイドライン2009

 
第10章 小児の高血圧


8.高血圧の管理

高血圧小児の管理手順を図10-1に示す。健診などで軽度の高血圧が発見された小児や青年は,異なる機会に繰り返し血圧を測定する。健診用基準を常に超える血圧は,中等度〜高度肥満がなければ二次性高血圧の可能性がきわめて高い。身体所見に異常がなければ,腎臓を中心に精査を進める。特に,乳幼児では先天性腎尿路奇形の存在を念頭に置く。白衣高血圧の除外には,小児でも家庭血圧測定が有用である。24時間連続血圧測定も白衣高血圧の判定に役立つほか,臓器障害をよく反映する669)。降圧薬目標は,診察室高血圧基準以下とするが,糖尿病や慢性腎疾患の小児では,血圧管理用の基準を目標とする。
薬物療法の適応は,[1]症候性高血圧,[2]二次性高血圧,[3]標的臓器障害の合併,[4]糖尿病の存在,[5]慢性腎疾患の存在,[6]3-6か月間の非薬物療法(食事,運動)後も持続する高血圧,などである658)

図10-1.小児高血圧の管理手順
同じ年齢なら身長が高いほど血圧は高い。
したがって,基準値前後の血圧が見いだされた場合は身長も考慮する。
図10-1.小児高血圧の管理手順

1)非薬物療法
小児・青年期の本態性高血圧は軽症例が多いので,非薬物療法を3-6か月間試みた後,薬物療法を考慮する。高校生に減塩を試み降圧に成功したという報告もあり656),食事療法ではまず食塩摂取量を減らす。動的運動(等張性運動)は肥満の解消だけでなく,直接に降圧作用を発揮するので,合併症がないかぎり勧める(「第4章 生活習慣の修正」 参照)。

2)薬物療法
第一選択薬はACE阻害薬かCa拮抗薬である。ACE阻害薬は,カプトプリル,エナラプリル,リシノプリルなどで小児における有効性と安全性が確立しているほか,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)も選択される。Ca拮抗薬は,ニフェジピンとアムロジピンがよく用いられる。

3)特殊な場合の降圧薬
片頭痛がある場合はβ遮断薬かCa拮抗薬を,糖尿病や慢性腎疾患がある場合は腎保護作用を期待できるACE阻害薬かARBを用いる。左室肥大を伴う例では,増殖性因子(TGF-β,アンジオテンシンIIなど)の作用を減弱させる目的でACE阻害薬やARBを用いる658)

 

 
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