(旧版)高血圧治療ガイドライン2009

 
第10章 小児の高血圧


2.高血圧の基準
1)血圧測定
高血圧の診断には,的確な血圧測定が不可欠である。座位か臥位で,幼児は保護者の膝に抱いてもらい測定する。小児の血圧測定は適切なサイズのマンシェットを選択することが大切で,水銀血圧計用として3歳以上6歳未満は7cm幅,6歳以上9歳未満は9cm幅,9歳以上は12cm幅(成人用)のものが市販されている。ただし,年齢より上腕周囲長や体格に合わせたほうがよく,ゴム嚢の幅が上腕周囲長の40%を超え,長さが上腕周囲を80%以上取り囲むものを選ぶ。

2)健診用基準
小児の高血圧基準値は,米国では性,年齢,身長別に細かく定められている658)。一方,本邦では小児の血圧に関する報告は乏しく655),656),659),660),本ガイドライン2000および2004年版では限られたデータをもとに表10-1に示す高血圧基準が定められた84)。米国の基準より収縮期血圧で約10mmHg高いが,(財)予防医学協会が測定した全国約4万人の小中学生の血圧値661)をこの基準で解析すると,高血圧有病率は小学校4年生男児1.4%,同女児1.8%,中学校1年生男子0.7%,同女子1.3%であり,従来の報告とほぼ一致する。したがって,一般的な血圧健診の成績から算出されたこの基準値は,スクリーニングを目的とした血圧健診に適切な基準といえる。

表10-1.健診用の高血圧基準
  収縮期血圧
(mmHg)
拡張期血圧
(mmHg)
幼児 ≧120 ≧70
小学校
低学年
高学年
 
≧130
≧135
 
≧80
≧80
中学校
男子
女子
 
≧140
≧135
 
≧85
≧80
高等学校 ≧140 ≧85
JSH2004の高血圧基準と同じ。
(文献84参照)


3)血圧管理用基準
基準値作成には,信頼できる血圧測定であることを前提に,年齢ごとの血圧値が示されている必要がある。これに合致する血圧健診から導き出された高血圧基準(95パーセンタイル値)を表10-2に示す662)。十分な安静と静粛な環境のもとで,上腕周囲長の40%以上になる幅のカフを用い,自動血圧計により3回連続測定し,3回目の記録を採用している。この基準の収縮期血圧は,米国における50パーセンタイルの身長者の高血圧基準値658)に近似する。拡張期血圧は水銀血圧計による米国の基準値より低いので,測定法を付記したほうがよい。糖尿病や腎疾患などの基礎疾患をもち,血圧を厳密に管理する必要がある小児では,表10-2の基準が望ましい。
高校生は,自動血圧計で3回測定した2回目,3回目の平均値を採用し,収縮期血圧は94パーセンタイル値,拡張期血圧は男子91パーセンタイル値,女子95パーセンタイル値を高血圧基準値とした報告では,男子135/75mmHg,女子120/75mmHgであった663)。従来の報告656)よりかなり低いが,対象が生活習慣病に関心をもつボランティアであり,BMIが30以上の者を除外している点を考慮する必要がある。

表10-2.血圧管理用の高血圧基準(mmHg)
学年 男子 女子
収縮期 拡張期 収縮期 拡張期
小学校 1年 107 60 108 60
2年 112 63 108 60
3年 114 62 111 61
4年 116 63 121 66
5年 117 63 119 66
6年 119 63 119 65
中学校 1年 125 66 126 68
2年 130 66 126 68
3年 136 68 128 70
平均身長での基準に相当し,身長が高い(低い)場合は基準値も高く(低く)なる。
(文献662参照)

 

 
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