(旧版)高血圧治療ガイドライン2009
第8章 高齢者高血圧
2.高齢者高血圧の基準と疫学研究成績
高齢者においても高血圧の基準は一般成人と同様140/90mmHg以上とする。本邦の久山町研究9)や,61の前向き研究から得られた心血管疾患の既往がない約100万人を対象としたメタ解析11)で,血圧上昇と心血管リスク増大に正相関が認められ,高齢になるに従い勾配は緩やかになるものの絶対リスクは増大し,80歳代でも正相関を示した。本邦における19年間の追跡研究であるNIPPON DATA80でも,75歳以上で血圧上昇と心血管死のリスク増大は正相関した25)。これらの事実に基づき,高齢者高血圧の基準を一般成人と同じとした。
一方,高血圧による心血管リスクや死亡率の増加について閾値があるとする疫学研究もある。死亡率に対する血圧値の閾値を算出したフラミンガム研究再解析575)では,加齢に伴い閾値が上昇し,前期高齢者(65-74歳)では,男性で約160mmHg,女性で約170mmHgであった。久山町研究では,60歳から79歳では140mmHg以上でリスクが有意に増大し,80歳以上では180mmHg以上にその閾値が上昇する9)。
さらに,85歳以上の地域住民を対象とした前向き研究では,血圧値と生命予後に逆相関がみられる。Vantaa 85+576)とLeiden 85-plus577)というまったく別の2つの集団で行われた試験において,収縮期血圧140mmHg未満の群と比較して160mmHg以上の群のほうが予後良好であった。
以上,基本的には高齢者においても血圧が低いほど心血管リスクは低いといえるが,研究対象や解析事項によって結果が異なることは,高齢者のなかでも年齢や病態に応じて高血圧の疾患としての意義が異なる可能性を示す。いずれにしてもこれらの成績は疫学研究から得られた結果であり,降圧薬治療の介入が有用な高血圧の基準を示すものではない。
一方,高血圧による心血管リスクや死亡率の増加について閾値があるとする疫学研究もある。死亡率に対する血圧値の閾値を算出したフラミンガム研究再解析575)では,加齢に伴い閾値が上昇し,前期高齢者(65-74歳)では,男性で約160mmHg,女性で約170mmHgであった。久山町研究では,60歳から79歳では140mmHg以上でリスクが有意に増大し,80歳以上では180mmHg以上にその閾値が上昇する9)。
さらに,85歳以上の地域住民を対象とした前向き研究では,血圧値と生命予後に逆相関がみられる。Vantaa 85+576)とLeiden 85-plus577)というまったく別の2つの集団で行われた試験において,収縮期血圧140mmHg未満の群と比較して160mmHg以上の群のほうが予後良好であった。
以上,基本的には高齢者においても血圧が低いほど心血管リスクは低いといえるが,研究対象や解析事項によって結果が異なることは,高齢者のなかでも年齢や病態に応じて高血圧の疾患としての意義が異なる可能性を示す。いずれにしてもこれらの成績は疫学研究から得られた結果であり,降圧薬治療の介入が有用な高血圧の基準を示すものではない。