(旧版)高血圧治療ガイドライン2009

 
第7章 他疾患を合併する高血圧


POINT 7d

【肝疾患】
  • 重症の肝機能障害では肝代謝型の降圧薬の血中濃度が上昇するため,投与量の減量などの調整が必要である。
  • β遮断薬は肝硬変患者の消化管出血と死亡のリスクを低下させる可能性がある。RA系阻害薬は肝臓の線維化を抑制する可能性がある。




7.肝疾患

一般に肝硬変が重篤になると,血行動態や血中生理活性物質の変動を介して血圧は低下傾向を示すが,高血圧があれば通常の降圧療法を行う。浮腫が存在する場合は二次性アルドステロン症を発症している可能性があり,RA系阻害薬や利尿薬の使用時には血中電解質濃度の変動に注意する。肝臓は薬物代謝において重要な臓器であり,肝硬変などの疾患による肝機能の著しい低下はプロドラッグの活性化の遅延や肝臓で代謝される薬物の血中濃度の上昇を起こす可能性がある。肝代謝型の降圧薬は重症肝硬変で血中濃度が上昇することがあるため,初回投与時には薬物用量の減量や服用間隔を延ばすなどの注意が必要である。ラベタロールとメチルドパによる薬剤性肝障害はよく知られており,これらの薬物は肝機能障害のある患者に投与してはならない。
プロプラノロールのような非心臓選択性β遮断薬は,門脈圧を低下させることで肝硬変患者の消化管出血と死亡のリスクを低下させることを示すいくつかのメタ解析結果が報告されている569)。一方,肝硬変患者において,ヒドロクロロチアジド,クロルタリドン,フロセミドなどの降圧利尿薬は急激な利尿作用を介して肝性昏睡を誘発することがあり,慎重に使用しなければならない。ARBやACE阻害薬などのRA系阻害薬は,基礎的な研究で慢性肝炎から肝硬変への移行期に線維化を抑制する可能性があるが,多数の患者を対象にした報告はない。一方,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)ではARBは線維化の改善をはじめとする病態改善に有効であるとする報告がある570)

 

 
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