(旧版)高血圧治療ガイドライン2009
第7章 他疾患を合併する高血圧
POINT 7d |
【気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患】
- 気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患をもつ患者では,β遮断薬およびαβ遮断薬は使用しない。ACE阻害薬は空咳の副作用があり,気道過敏性も亢進させるため推奨できない。Ca拮抗薬,ARB,少量の利尿薬は使用可能である。
6.気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患
気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患では,肺(気管支)の病変だけでなく呼吸筋の疲弊,血液の酸素運搬能の低下,心血管系の機能低下,交感神経系の亢進とRA系の活性化などが複雑に関与している。過大な食塩摂取が気管支過敏性を亢進させるかどうかの問題についてはいまだ結論が出ていないが565),少なくとも食塩制限は高血圧に合併した気管支喘息に悪影響を与えない。また運動については,運動誘発喘息の場合もあるので,病型や重症度に応じて適切な指導を行う。
降圧薬の選択においては,気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患をもつかその既往歴のある患者には,β遮断薬は気道けいれんを誘発する可能性があるため,β1非選択性・選択性のいかんにかかわらず原則として使用禁忌である。またαβ遮断薬も,β遮断作用によって気道攣縮を起こすため使用しない。ACE阻害薬は咳反射の閾値を低下させることによって高齢者の肺炎の発症を抑制することが知られているが566),567),気管支過敏性を高めることから気管支喘息の患者には勧められない。同じRA系阻害薬のARBは,気道感受性にも気管支平滑筋にも影響しないため使用可能である。また,慢性閉塞性肺疾患患者にARBを投与した試験では,肺の過膨張の改善と低酸素性多血症の改善がみられたとの報告もある568)。α遮断薬とCa拮抗薬はともに気管支平滑筋の緊張を和らげる作用があり,気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患の患者ではよい適用となる。降圧利尿薬は脱水状態をきたした場合に痰の喀出が困難になるため,使用する際は少量にとどめるとともに,適切な水分摂取も指導する。
気管支喘息発作は患者にとって大きなストレスであり,発作によって血圧が上昇する。さらに気管支喘息の治療薬であるβ2刺激薬やステロイド薬によって血圧が上昇することがあり,薬剤間相互作用にも注意することが必要である。また,一般的に降圧薬は他の薬物に比較すると薬剤性肺障害を起こす頻度は低いといわれているが,その発症についても常に留意することが必要である。
降圧薬の選択においては,気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患をもつかその既往歴のある患者には,β遮断薬は気道けいれんを誘発する可能性があるため,β1非選択性・選択性のいかんにかかわらず原則として使用禁忌である。またαβ遮断薬も,β遮断作用によって気道攣縮を起こすため使用しない。ACE阻害薬は咳反射の閾値を低下させることによって高齢者の肺炎の発症を抑制することが知られているが566),567),気管支過敏性を高めることから気管支喘息の患者には勧められない。同じRA系阻害薬のARBは,気道感受性にも気管支平滑筋にも影響しないため使用可能である。また,慢性閉塞性肺疾患患者にARBを投与した試験では,肺の過膨張の改善と低酸素性多血症の改善がみられたとの報告もある568)。α遮断薬とCa拮抗薬はともに気管支平滑筋の緊張を和らげる作用があり,気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患の患者ではよい適用となる。降圧利尿薬は脱水状態をきたした場合に痰の喀出が困難になるため,使用する際は少量にとどめるとともに,適切な水分摂取も指導する。
気管支喘息発作は患者にとって大きなストレスであり,発作によって血圧が上昇する。さらに気管支喘息の治療薬であるβ2刺激薬やステロイド薬によって血圧が上昇することがあり,薬剤間相互作用にも注意することが必要である。また,一般的に降圧薬は他の薬物に比較すると薬剤性肺障害を起こす頻度は低いといわれているが,その発症についても常に留意することが必要である。