(旧版)高血圧治療ガイドライン2009

 
第7章 他疾患を合併する高血圧


POINT 7a

【脂質異常症】
  • 脂質異常症合併高血圧患者の降圧薬選択に関しては,α遮断薬やACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬などのような脂質代謝改善効果を有するもの,あるいは増悪作用のない薬剤が好ましい適応となる。




2.脂質異常症

高コレステロール血症と高血圧の合併では,動脈硬化のリスクが増大することが本邦のJ-LIT528)からも明らかであるが,そのような患者には,両疾患に対する積極的な管理が必要である。ASCOT-LLA529)など最近の臨床試験の結果,高血圧合併高LDLコレステロール血症患者では,積極的な血清LDLコレステロール低下療法は虚血性心疾患や脳卒中の発生や再発を予防することができるとされており,本邦の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版』においても高血圧など危険因子合併時のLDLコレステロール管理をより厳しくすることが提唱されている。血清LDLコレステロールレベルと血圧がともに上昇した患者に対しては,第一に生活習慣の修正,すなわち肥満の是正,飽和脂肪酸,コレステロール,アルコールの摂取抑制,運動量の増加を強く指導する。一般療法で高コレステロール血症が改善しないときには,HMG-CoA還元酵素阻害薬を中心に薬物療法を併用する。高血圧と高コレステロール血症を有する患者については生活習慣修正と脂質低下薬を用いて,高コレステロール血症を適切な治療目的に到達させる。高トリグリセライド血症や低HDLコレステロール血症を合併する場合には,インスリン抵抗性もしくはメタボリックシンドロームの存在を考慮すべきであり,その場合の脂質異常症には,原則的には生活習慣の修正とフィブラート系薬剤などで改善を図る。6か月以上の生活習慣の修正でも脂質異常の改善が認められない場合には,フィブラート系薬剤などで改善を図る。
高コレステロール血症患者における降圧目標については,J-LITのサブ解析143)では,スタチン投与下で総コレステロール220mg/dL以上の高コレステロール血症群では130/80mmHgより心血管疾患が有意に高くなり,正常コレステロール値に管理された群の140/90mmHg以上より低い血圧値で危険因子になっていた。今後の疫学研究で同様の結果が確認されれば高コレステロール血症合併高血圧患者の降圧目標が低くなる可能性がある。脂質異常症患者における降圧薬の選択に関しては,各種降圧薬の脂質代謝に及ぼす影響を考慮しなければならない。高用量のサイアザイド系利尿薬やループ利尿薬は,血清総コレステロール,トリグリセライドおよびLDLコレステロールを上昇させることが知られているが,低用量のサイアザイド系利尿薬ではこれら脂質の上昇作用は明らかではない。β遮断薬では,血清トリグリセライド上昇作用やHDLコレステロール低下作用が指摘されている。a遮断薬は,血清コレステロールを減少させ,HDLコレステロールを上昇させる。ACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬および中枢性交感神経刺激薬は,血清脂質に影響しない。
脂質異常症を合併する高血圧患者の降圧薬選択には,脂質代謝の面からはa遮断薬やACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬のような脂質代謝改善効果を有するもの,あるいは増悪作用のない薬剤が好ましい。

 

 
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