(旧版)高血圧治療ガイドライン2009

 
第4章 生活習慣の修正


4.運動

運動の降圧効果は確立されている265)。中等度の強さの有酸素運動で血圧低下のみならず,体重,体脂肪,腹囲の減少や,インスリン感受性やHDLコレステロールレベルの改善が示されている。さらに,身体活動の低下は独立した心血管死亡の危険因子である266)。したがって,運動は高血圧患者の生活習慣修正項目として重要である。
高血圧などの生活習慣病の予防や治療にはウォーキング(脈がやや速くなる程度の速歩が推奨される)のような有酸素運動が優れている。これに除脂肪体重の増加や骨粗鬆症や腰痛を防止する効果のある軽度のレジスタンス運動,および関節の可動域や機能を向上させるストレッチ運動を補助的に組み合わせる。運動強度が強いほうが心血管保護効果があるという成績も示されており,米国スポーツ医学協会(ACSM)/AHAの一般向けの勧告では,運動強度の強い運動を中等度の運動に交えて行うことが推奨されている267)。しかし,高血圧患者においては運動強度が強すぎると運動中に血圧上昇をきたす可能性があり268),正常血圧者と異なり運動強度が強いと予後が悪いという報告269)もあることから,高血圧患者に強度の運動は推奨できない。運動は定期的に毎日30分以上を目標に行うが,少なくとも10分以上の運動であれば合計して1日30分以上で目標を達成できたとしてよい267)。『エクササイズガイド2006』270)によると,身体活動を運動と生活活動に分け,生活活動に重点を置き身体活動度を増加させるという方針が示されている。患者教育においても日常生活のなかで身体活動度を上げるべく指導するのが現実的であると考えられる。
なお,運動療法の対象者は中等度以下の血圧値で心血管病のない高血圧患者である。リスクの高い患者は事前にメディカルチェックを行い,必要に応じて運動の制限や禁止などの対策を講じる。有酸素運動は高齢者においても合併症なく降圧をもたらしたという報告271)があるので,単に高齢者であるからといって運動を制限すべきではないが,事前のメディカルチェックは必要である。

 

 
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