(旧版)高血圧治療ガイドライン2009

 
第4章 生活習慣の修正


POINT 4


  • 減塩:減塩目標は食塩6g/日未満とするが,より少ない食塩摂取量が理想である。安全性のエビデンスがあるのは3.8g/日までである。一般医療施設における食塩摂取量評価は随時尿(クレアチニン補正)で行うのが実際的である。多くの包装食品はNa表示なので,換算式(Na量[g]×2.5=食塩量[g])が減塩指導では有用である。
  • 食塩以外の栄養素:野菜・果物を積極的に摂取し,コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。魚(魚油)の積極的摂取も推奨される。
  • 減量:BMI(体重[kg]÷身長[m]2)25未満が目標であるが,目標に達しなくとも,4-5kgの減量で有意な降圧が得られる。腹囲も考慮する。
  • 運動:中等度の強さの有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う。心血管病のない高血圧患者が対象で,リスクの高い患者は事前にメディカルチェックを行い,対策を講じる。
  • 節酒:エタノール換算で男性20-30mL/日以下,女性10-20mL/日以下に節酒をする。
  • 禁煙:喫煙は心血管病の強力なリスクであり,一部で高血圧への影響も指摘されているので,喫煙(受動喫煙を含む)の防止に努める。
  • その他:防寒や情動ストレスの管理などを行う。
  • 複合的な生活習慣修正はより効果的である。



高血圧の発症には遺伝素因と環境要因が関与しており,環境要因は生活習慣の影響を受ける。生活習慣の修正はそれ自体で軽度の降圧が期待されるだけでなく,降圧薬減量の一助となりうる。高血圧以外の心血管病,危険因子の合併予防の目的からも,原則としてすべての高血圧患者に対して生活習慣修正の教育・指導を行う。生活習慣の修正項目を表4-1に,それぞれの生活習慣修正による降圧の目安を図4-1に示す。


表4-1.生活習慣の修正項目
1.減塩 6g/日未満
2.食塩以外の栄養素 野菜・果物の積極的摂取
コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える魚(魚油)の積極的摂取
3.減量 BMI(体重(kg)÷身長(m)2)が25未満
4.運動 心血管病のない高血圧患者が対象で,中等度の強度の有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う
5.節酒 エタノールで男性20-30mL/日以下,女性10-20mL/日以下
6.禁煙  
生活習慣の複合的な修正はより効果的である
  • 重篤な腎障害を伴う患者では高K血症をきたすリスクがあるので,野菜・果物の積極的摂取は推奨しない。糖分の多い果物の過剰な摂取は,特に肥満者や糖尿病などのカロリー制限が必要な患者では勧められない。


図4-1.生活習慣修正による降圧の程度
図4-1.生活習慣修正による降圧の程度
文献:248(減塩),43(DASH食),264(減量),265(運動),274(節酒)の成績を用いた。

ここに示した成績は欧米の論文より引用したものである。メタ解析の場合はカッコ内に条件を示した。ただし生活習慣の修正の効果は,修正前の患者の生活習慣,患者の遺伝的背景などにも影響されるので,この図を直ちに日本人にあてはめることはできない。またDASH食はメタ解析がなかったので論文から引用した。少人数(412人),短期間(30日)の研究であるので,大きなバイアスがかかっている可能性は否定できない。

 

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す