(旧版)高血圧治療ガイドライン2009
第3章 治療の基本方針
3.治療対象と降圧目標
1)治療対象
(1)年齢
高血圧治療はすべての年代の高血圧患者が対象になる。ただし,欧米で行われた高齢者介入試験の成績から,80歳以上では高血圧が心血管病のリスクにはならない場合がある198),204)。しかし,80歳以上の超高齢者を対象とした最近のHYVET205)では,降圧薬治療により脳卒中死亡と総死亡が減少することが示されている(「第8章 高齢者高血圧」 参照)。
(2) 血圧レベル
血圧と心血管死亡を前向きに検討した61の試験をメタ解析した成績11)によると,血圧が115/75mmHg以上の場合には血圧の上昇とともに心血管死亡が増加してくることが示されており,またフラミンガム心臓研究142)における長期間の観察では,正常高値血圧にある人は至適血圧値を示す人に比較して心血管病のリスクが倍増することを認めている。したがって,JNC750)においては,前高血圧(120-139/80-89mmHg)例は生活習慣修正の対象とし,高血圧(≧140/≧90mmHg)患者は生活習慣修正と並行して,降圧薬治療の対象としている。
一方,本邦の疫学研究において,140/90mmHg以上で北海道の端野・壮瞥町研究206)では心血管死亡が,福岡県の久山町研究9)では脳卒中発症率が有意に増加してくることが示されており,本ガイドラインではJSH200484)と同様に140/90mmHg以上を高血圧としている。したがって,高齢者も含めて140/90mmHg以上は治療対象となる。
また,糖尿病やCKD合併例,あるいは心筋梗塞後患者では,130/80mmHg以上が治療対象になると考えられる。すなわち,正常高値血圧以上の血圧を示す例,あるいは正常血圧であっても糖尿病,CKD,メタボリックシンドローム,複数の危険因子や臓器障害,心血管病がある場合は生活習慣の修正の対象となる。また,すべての高血圧および正常高値血圧であっても糖尿病・CKD・心筋梗塞後患者では,降圧薬治療の対象となる。
一方,本邦の疫学研究において,140/90mmHg以上で北海道の端野・壮瞥町研究206)では心血管死亡が,福岡県の久山町研究9)では脳卒中発症率が有意に増加してくることが示されており,本ガイドラインではJSH200484)と同様に140/90mmHg以上を高血圧としている。したがって,高齢者も含めて140/90mmHg以上は治療対象となる。
また,糖尿病やCKD合併例,あるいは心筋梗塞後患者では,130/80mmHg以上が治療対象になると考えられる。すなわち,正常高値血圧以上の血圧を示す例,あるいは正常血圧であっても糖尿病,CKD,メタボリックシンドローム,複数の危険因子や臓器障害,心血管病がある場合は生活習慣の修正の対象となる。また,すべての高血圧および正常高値血圧であっても糖尿病・CKD・心筋梗塞後患者では,降圧薬治療の対象となる。
2)降圧目標(表3-1)
JSH2004における若年者・中年者の降圧目標は130/85mmHg未満であり,糖尿病や腎障害合併例では130/80mmHg未満としている。また,高齢者では140/90mmHg未満としている。HOT159)や最近のFEVER/207)では,一般的な降圧目標を140/90mmHg未満とすべき成績が得られている。また,2007年のESH-ESC 2007ガイドライン85)では,糖尿病と腎障害合併例に加えて脳血管障害や冠動脈疾患合併例においても,PROGRESS155)のポストホック208),EUROPA209),ACTION210),CAMELOT211)などで厳格な降圧が心血管イベントの減少をもたらすことが示されたことから,130/80mmHg未満を降圧目標値としている。JSH2009における降圧目標は,若年者・中年者は130/85mmHg未満とし,糖尿病,CKD,心筋梗塞後患者は130/80mmHg未満とする。脳血管障害患者は140/90mmHg未満とし,高齢者においても最終降圧目標は140/90mmHg未満とするが,75歳以上の後期高齢者では臓器障害を伴っていることが多く,降圧薬治療が重要臓器の循環障害をもたらす可能性があるので,症状や検査所見の変化に注意して慎重な降圧治療を行うことが必要である。
表3-1.降圧目標 |
若年者・中年者 | 130/85mmHg未満 |
高齢者 | 140/90mmHg未満 |
糖尿病患者 CKD患者 心筋梗塞後患者 | 130/80mmHg未満 |
脳血管障害患者 | 140/90mmHg未満 |